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公式小樽観光ガイドマップ「つむぐおたる」では、「海と運河がつむぐ7つの小樽の物語」という切り口で、7つの物語に分けて小樽を紹介していますが、今回は、物語の一つ「港と鉄道」にスポットを当てます。
※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。
日本遺産「北海道の「心臓」と呼ばれたまち・小樽」
明治以降、急速に発展していく小樽は、未来を夢見た人々の「民の力」によって北日本随一の商都となり、小説家・小林多喜二により “北海道の『心臓』”と表現されました。しかし、そんな小樽も高度経済成長期には「斜陽のまち」と呼ばれるほど衰退し、その鼓動は弱まります。そして、荒廃した運河の埋立計画を契機に、まちに残されていた遺産を保存、再生する道が、再び「民の力」によって開かれていきます。元気を失った「北海道の心臓」は新たな鼓動を始め、現在、観光都市として賑わうまちになりました。
この小樽の物語は、「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽~「民の力」で創られ蘇った北の商都」として、令和7年2月4日に初の小樽市単独の日本遺産に認定されています。
小樽のまちが心臓であるならば、港と鉄道は大動脈。小樽に残された大事な歴史遺産である港と鉄道のその後について、見ていきましょう。
港を巷(ちまた)に
まずは、港に目を向けてみましょう。小樽商工会議所が2011年から進めてきた「港湾振興プロジェクト」についてご紹介します。担当の笹原馨さんと小山裕太さんにお話を伺ってきました。

「港湾振興プロジェクト」は、小樽は港町であるのだから、小樽の発展の基礎でもある港そのものに、もっと目を向けてみようということから始まった取り組みです。
小樽港の現状や課題調査を行った第1期(2011年4月~2012年4月)を経て、第2期(2012年7月~2015年4月)には、第3号ふ頭に重点を置き、「みなと観光拠点の整備」と「大型客船受入環境の整備」について提言を行っています。
この時、小樽駅からまっすぐ海側に下りてきた場所である第3号ふ頭を目指して、「運河を越えて 港を巷に」という言葉が誕生します。これまでの「物流港」から「人流港」へ、そして、「運河観光」から「みなと観光」への発展を描いたものでした。

※この第2期にて制作されたイメージ映像「港を巷(ちまた)に~for our Future~」がとても素敵です。見たことないという方は、是非見てみてくださいね!
プロジェクト第3期(2015年5月~2020年1月)においては、コンテナを活用した社会実証実験として、プロジェクト第2期に制作した映像に登場したコンテナカフェを実際に港に発言させるプロジェクト「コンテナカフェPHANTOM」(2015年)を実施。また、翌2016年には、「港を巷にHATOBA.C.Y(ハトバ コンテナヤード)プロジェクト」と題し、コンテナカフェのほかに、屋外バル「チマタBAL」、雑貨やアート作品の販売・展示「ハトバGARAGE」などの取組が実施されました。
また、港を核としたまちづくりを推進するため、港版「道の駅」とされる「みなとオアシス」の小樽港登録を目指し視察やシンポジウム開催などの活動も、展開されました。


そして、2020年にプロジェクトは「みなと観光プロジェクト」へと名称変更し、第3号ふ頭基部への再整備事業検討が行われました。その後、小樽市が「第3号ふ頭を核とした魅力づくり連絡会議」を設置し、「みなと観光プロジェクト」の考えも取り入れながら、港湾整備が進められていきます。

日頃から小樽の動きに詳しい方なら、ピンと来るかもしれませんが、そうです!現在の第3号ふ頭の姿が新しく様変わりしているのは、これらのプロジェクト活動の賜物でもあるのですね。
▶小樽商工会議所
・公式サイト
・「ー港を巷にー 小樽みなとまちづくりプロジェクト」Facebookページ
現在の小樽港は?
大型クルーズ客船が第3号ふ頭に着岸できるよう国による工事が2024年春に完了、それより1年早く、小樽市によって整備された小樽港クルーズターミナルが完成しており、現在、大型クルーズ客船はほとんど第3号ふ頭で発着しています。
2024年3月末には小樽国際インフォメーションセンターが開業し、同年4月には「みなとオアシス小樽」として、登録もされました。また、2025年8月に小樽港観光船ターミナルが開業し、第3号ふ頭の風景は、どんどん様変わりしています。



現在は、緑地化整備が進められており、増設予定の桟橋も完成したところで、一連の整備事業は完了となり、2026年春には、運河クルーズや青の洞窟などの船のアクティビティも、第3号ふ頭から発着する予定となっています。
▼おふたりに、小樽の港のおすすめポイントを聞きました!
「まず、観光船ターミナルからの景色です。2階に上って外に出ると、海をすぐそばに感じられます。⼤型のクルーズ客船が寄港している時は、クルーズ船の⿐先がすぐ目の前に迫ってきますので、迫⼒があります」
「それから、港をぜひ散歩してみてください。第2号ふ頭あたりの倉庫が並んでいる風景も、ちょっと日常から離れたような、SFチックな印象を受けると思いますよ」


(ノルウェージャンスピリット/75,000t)
番外編:クルーズ客船を眺められる場所のおすすめはこちら
第3号ふ頭が整備され、大型クルーズ客船が入港するようになり、港の風景も変わりました。大きな船が接岸している風景に驚く方も多いでしょう。市民も観光のお客様も、特別な小樽港の風景が印象に残っているのではないでしょうか。港以外にも、クルーズ客船を感じられる場所がありますので、ご紹介します!






鉄道の記憶 「レールカーニバル」
さて、続いては、鉄道です。線路跡の活用と言えば、小樽ではこの方!NPO法人北海道鉄道文化保存会 理事長の清水道代さんにお話を伺ってきました。
北海道鉄道文化保存会は、博物館の展示車両の保存ボランティアや手宮線跡地の活用などに取り組まれ、現在会員が40名のNPO団体です。その理事長を務める清水さんは、なんと御年82歳!2008年のNPO立ち上げ時から、創設メンバーとして現在まで、精力的に活動を続けられています。
日頃は、小樽市総合博物館本館内のミュージアムショップにいらっしゃる清水さん。ここにしかないオリジナルグッズを取り扱っていることもあり、鉄道ファンの方も訪れるそうです。印でつながる廃線めぐりということで北海道鉄道文化保存会がプロデュースした「廃線印帳」も販売中です!

▶北海道鉄道文化保存会
・公式サイト
・Facebookページ
会員募集中です!ご興味ある方はお気軽にお問合せください。
手宮線跡地については、「せっかく歴史があるものを活かしていかなければ、その価値がなくなってしまう」と、先代の理事長と何ができるかを考え始めたのが発端。岐阜県で神岡鉄道廃線跡を利用し、自転車を走らせている事例を知り、実際に小樽でも自転車を手宮側のエリアで走らせていたそうです。
その後、トロッコ6台を譲り受け、現在の「レールカーニバル」につながる取組が本格的に始まります。当時は運営にかかる人材、いわゆるマンパワーの不足に悩まされていましたが、北海道遺産「小樽の鉄道遺産」や日本遺産「炭鉄港」の認定を受けたことが後押しとなり、高校生や市民、市役所職員によるボランティア態勢も整うようになったそうです。
以前は、手宮側で実施していたトロッコ運行も、散策路整備工事の関係から中央通り側で開催できるようになり(!)、より観光客の皆さんにも知られることとなりました。認知度がどんどん上がり、今では年間約2,300人に利用されているとのこと。


昔は、草がボーボーで線路跡に入ることができないとすら思われていた場所ですが、活用されるようになり、地元の人にとっては、かつて生活の一部であった線路がよみがえったような感覚、嬉しく懐かしい風景なのかもしれません。清水さんのもとには「トロッコはいいけど、汽車は走らせないでね。洗濯物が煙で汚れるから」という冗談なども寄せられたそうです。
「民の力」の本領発揮「花と鉄路の散策路」
トロッコを走らせ始めてみると、今度は散策路の手入れが気になってきます。また歩きたいと思える場所にしたい、そして北運河へとつなげる動線にしたいと、小樽市役所とかけあい、2015年から花壇の整備に着手します。会員7名、平均年齢は約75歳と、こちらも人手は十分ではありませんが、ボランティアの方々の協力を得つつ、コツコツと活動を続けてきました。
今では寿司屋通りから旧日本郵船㈱小樽支店までのあいだに、枕木で囲まれた花壇が16か所整えられ、歩く人の目を楽しませてくれています。お散歩中の園児の歓声が聞こえたり、介護施設に入居されている方々がお花を見て喜ばれていたり、楽しみにしてくれている人がいるから、清水さんたちはこの活動を続けられているとのこと。


一般的には、線路の中というのは入ることができませんが、手宮線跡地であれば、線路沿いに歩くこともでき、観光客の方々は思い思いにポーズを取り、観光スポットへの変化していきました。また、坂ではなく平坦な道なので、通勤や散策に、市民も足を運ぶ方が多いそうです。観光のお客様にも市民にも、ともに憩いの場になっているのですね。
▼清水さんに、手宮線跡地のおすすめポイントを聞きました!
「四季が素晴らしいですね、春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪あかり、それぞれの魅力があります。そして、中央通りに立って、左右を見てみてください。線路がどこまでも続いてく様子を体感できます。足を運んでみると、それぞれのブロックにそれぞれの顔があるのも面白いところ。これは夢なんですが、手宮線で朝マルシェが開催されるようになったら楽しいでしょうね。淹れたてのコーヒー、焼き立てのパン、雑貨や食材などが購入できて、賑わいのある風景が生まれたらいいなぁ」
■歩いて感じる港と鉄道
JR小樽駅から手宮方面へ歩いてみると、あっという間に港と線路が出会うエリアにたどり着きます。わずか数百メートルの中に、鉄道の歴史、港の記憶が重なり合っているのですが、この場所をただ“見る”のではなく、自分の足でたどってみることが、小樽観光の面白さかもしれません。歴史を知り、そして、今を知ることで、風景の感じ方も変わってくることでしょう。小樽通を読んでから、是非、散策をしてみてください!

小樽通 編集部 永岡朋子
小樽運河と小樽港の間にある小さな事務所で、小樽観光を支えてくれる皆さんと日々奮闘中。Webマガジン小樽通では、記事制作も担当します。小樽の風景を撮るのが好きだったけれど、最近全く活動できていないので、なんとか活動再開したい!
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