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【月刊小樽自身2023年12月号】まるで百年の片思い…現代のアーティストが時を超えて表現する”防波堤”

2023.11.25

小樽の港を100年以上守り続けている二本の防波堤
この防波堤を、かつて作家の伊藤整は"抱きしめるように守る両腕"に喩えました。
町を守り続けている防波堤の儚い想い、それはまるで百年の片思い…。

そのようなコンセプトのもと、現在ウイングベイ小樽で企画展が開催されています。そんなロマンチックな企画に関わっている人達に話を聞いてみたい!
ということで、企画展のご紹介のほか、主催者の方や作品を制作した作家の方にもお話をお聞きしました!



百年片思プロジェクト

現在開催されている"百年片思プロジェクト"。
北海道遺産でもある小樽の防波堤をテーマに、「HuG展」と「水のカタチ」という二つの企画が同じ場所で開催されていますので、併せてご紹介いたします!

■主催
テオプロジェクト
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HuG展

■概要
かつて、防波堤を"抱きしめるように守る両腕"と喩えた作家がいた。
現代のアーティストは、防波堤をどのように捉え、どう表現するのか。

■日時等
日程:2023年11月5日(日)~2024年1月13日(土)
時間:10:00~20:00
※観覧無料

■会場
ウイングベイ小樽4階 ジャーディカーブ
GoogleMap

■作品・作家紹介
ここからはHuG展の作品と作家さんのご紹介。
作家の皆様は全員小樽にゆかりがあります。
現代の作家がどのように小樽の防波堤を感じ、表現しているのか必見です!

「鳥たちへ」
作:佐藤T

小樽で過ごしたあの頃、
私は鳥のようにゆったりと自由に過ごしていた。
海と空が混ざる心地よい風が、
何処までも通り抜けて行く短い夏の水平線。

(佐藤Tさん )
画家。小樽出身。武蔵野美術大学卒業。東京を中心に個展、グループ展、アートフェアなどで活動。主にキャンバスにアクリルガッシュで人物画を描く。
※どこか郷愁を感じさせる、そんな小樽の海を描きました。
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「先ず自分を抱きしめる」
作:SAHO HARABE

自分を大切にできたら、
初めて隣人を抱きしめられる。

(SAHO HARABEさん)
グラフィックと空間デザインを手がける傍ら、様々な素材を掛け合わせた作品制作を行っている。アンツーカーを素材として扱った彫刻がエスコンフィールド北海道に常設展示中。
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「南防波堤」
作:森谷亮介 @nitalimo

荒波から小樽港を守っている南防波堤

(森谷亮介さん)
1986年、京都府舞鶴市生まれ。西舞鶴高等学校、小樽商科大学卒。2019年に合同会社Nita Limoを設立。
映像や写真の撮影・編集、印刷物やWEBのデザインを行う。
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「守るために強くあれ」
作:HiNA

防波堤の擬人化された表現から受けた
そのままの印象から手を題材に描いています。

(HiNAさん)
雪降る日に生まれた小樽の画家。
風景や人物など、対象を感じたままの色彩によって素朴に表現し制作している。
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「吐海」
作:船戸 晴名

当企画展唯一のエッセイ作品。
愛について独特な感性で語る。(内容は会場にて)

(船戸 晴名さん)
札幌市出身・猫と珈琲を愛する小樽商科大学学部生。幼い頃から文学に親しみ…といった過去はまったく無い。大学入学時から数多のイベントに関わる中で学んだ唯一無二の物語を宿す小樽を、気味の悪い感性で綴る。

「いなす」
作:雨情

防波堤が出来るまでは自然の猛威になす術もなかった。
立ち向かわず、荒波の威力を抑える事でこの町を守った鉄壁。
日本語には、それにピタリとはまる素敵な言葉がある。
抗えない脅威を「海の神獣レヴィアタン」に見立てたAIアート。

(雨情さん)
テオプロジェクトを主宰している盛合将矢さんの作家ネーム。普段はフリーライターやプロデュース業務に関わる。今回は画像生成AIであるMidjourneyを使い、約100種類ほどの絵を生成してから煮詰めていった。
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小樽の防波堤をどのような想いで制作したのか気になる…
ということで「鳥たちへ」を制作した佐藤Tさんに、一言お聞きしましたのでご紹介します!

--今回防波堤をテーマに制作する中で、何か感じるものはありましたか?

(佐藤Tさん)
私が上京して10年以上経ちました。10年経った今でも小樽の風景がありありと目に浮かびます。
学生時代はウイングベイによく遊びに行き、大きな窓から青く眩しい海を眺めたり、下校中わざと遠回りをして臨海公園のベンチから静かな海をゆったりと見つめることが楽しみの一つでもありました。
夕日に当たりオレンジ色に染まる防波堤の色が綺麗で、印象に残っています。
今回ウイングベイで絵を飾らせてもらうというお話をいただき、防波堤のその先の世界に思いを馳せていた当時の頃を思い出しながら絵を描きました。

学生時代の思い出とその時の防波堤の印象…素敵なお話ですね。
会場では、佐藤Tさんが見た景色と同じ景色を見ることができますので、ぜひ実際に行ってみてください♪(ゆったりとした時間が流れているこの会場でアートに触れるのは格別ですよ)



水のカタチ

次にご紹介するのは、大迫力の壁画「水のカタチ」です!

■日時等
日程:2023年11月1日(水)~常設展示
時間:10:00~20:00
※観覧無料

■会場
ウイングベイ小樽4階 ジャーディカーブ
GoogleMap

実はこの壁画、なんと子供たち(SAFYの皆さん)と3人のデザイナー(SAHO HARABEさん、兼平祐弥さん、HiNAさん)による合作!
ウイングベイ小樽の真っ白い壁。大きなキャンパスに子ども達が自由に描いた様子が発信されてますのでご紹介します↓

※ズームしてお読みください

制作時の様子が動画でも発信されていますので、こちらもどうぞ!
前編 ・後編

実は壁画の中には色々なものが隠されています。
よく見ると防波堤も!

どこを切り取っても絵になるのはすごい!
あえて思い切り近づいて写真をとるのがすごく楽しかったです♪



主催者の盛合さんにお話しを聞いてみました!

テオプロジェクト代表の盛合さん

--百年片思プロジェクトを始めようと思ったきっかけについてお聞かせください!

(盛合さん)
小樽には魅力的な物語が多く存在しますが、その複雑さが初心者にはハードルとなり得ます。そこで、小樽の豊かな歴史をより身近に感じてもらうため、アートを取り入れたプロジェクトを企画しました
プロジェクト「百年片思」は、この町を100年以上も守り続けてきた防波堤にスポットライトを当てています。
壁画制作、ハグ展の開催、パンフレット製作といった3つの仕掛けによって、防波堤がこの町に対して抱く想いを具現化しています。
このプロジェクトのネーミングは、別府現代芸術フェスティバルの「混浴温泉世界」など、地域の特色を活かしたアートイベントから着想を得ています。

--ウイングベイ小樽4階のこの場所で開催することについて、その思いをお聞かせください。

(盛合さん)
小樽の中心部だと、面倒なしがらみや大人の事情に巻き込まれる可能性がありますが、築港エリアやウイングベイ小樽はまだ侵食されていません。また、この商業施設は若い人も多く訪れ、悪天候でも廊下から防波堤を眺めることが出来る事から、この場所を選びました。

HuG展を振り返ると、防波堤を一望できる景色が!
盛合さんによると、荒天のほうが防波堤に波が当たり、良い景色が見られるのだとか。

--盛合さんは作家の一人として、今回AIアートを活用し作品を展示しておりますが、AIアートに対しての思いもお聞かせください。

(盛合さん)
コンセプトを書ける人は、絵が描ける。そんな時代が到来したと思います。
ハグ展のチラシで使っている画像も生成AIです。抽象的なアイデアや言葉でも、AIが視覚的な芸術作品にしてくれるので、「防波堤=守る」の概念をいろんなパターンで試し、AIとの100回を超えるラリーを重ねて出力しました。自分の中にある、まだ具現化できない「想い」を約3分でイラストや絵にしてくれるのは驚異的、まるで魔法使いになった気分です。

なんとこの愛溢れる画像もAIアートだったとは!

でもこれは、アーティストへの敬意があるからこそ出来ています。アーティストがどれだけ苦労して創作しているか少なからず分かってきているので、イラストをオーダーして返ってきたときに「もう少しここをこうして」と、チラシの修正依頼のように指示を出すのは忍びない。でも妥協はできない。そんな時にAIは便利です。

人間が生み出す繊細さや、その人の体験や技術の蓄積からくる作品の奥行きなどは機械に到底敵うことはなく、アーティストがAIに代わることは無いと思います。ですが、上手な使い方はきっとある。※あと、AIは大きいサイズの画像や絵を描くのが苦手です。
せっかくこんな時代に生きているんだから、一ヵ月でいいから画像生成AIに触れてみると、楽しいと思います。

--アートと小樽について、今後の展望などあればお聞かせください!

アートを通じた地域活性化の取り組みは、様々な自治体で多くの成功例を生んでいます。小樽の歴史を通じたまちづくりとアートの融合に大きな可能性を感じていますが、個人的には先に土壌を作ることが大切な気がしています。
2020年に実施された文化庁メディア芸術祭小樽展でのチームラボや初音ミクなどの作品展示は、小樽とアートが組み合わさった象徴だと思います。あの企画によって、アートやメディア芸術による小樽革命の鐘が大きく鳴り響いたと思うのですが、それに共鳴できた市民は一部だった気がしています。

盛合さんが、小樽はこれからも芸術に溢れる町であり続けてほしいとの想いを込めて仲間と制作した同人誌「RAIN第二号」

「チームラボの作品が小樽で展示されていた」という事実を今でも知らない人もいて、私自身も当時は何がすごいのか理解できませんでしたが、3年かかってやっと、あの時の鼓動を自分なりに解釈しているつもりです。
でも、アートプロジェクトはその鋭さが必要だと思っています。例えば1999年に公開されて大ヒットした映画「マトリックス」、その脚本は3年前には既に出来ていたのに、周りにいくら説明しても理解されず、企画が通らなかったという都市伝説があります。

ゼロからイチを作り、時代を追い越して先走り出来る人と、「いいね!」と言って応援して共感する人。その関係性がその他大勢の人に徐々に伝播し、魅力が伝わっていく。重要なのは中間に入る「それ、いいね!」と言える役割やチャンネルが増える事だと思います。
かなり端折って結論を言うと、アートと小樽の相性は抜群だと思いますが、その為に「失敗にこそ拍手できるまちの雰囲気」「若者の感性を否定しない空気感」を作ることが何より重要だと思います。

--私自身も今回のアート展を見て、これまでの小樽人生の中で、防波堤のことを一番考えた時間になりました。 文献も大事ですが、アートという切り口も大事にしていきたいですね。
--盛合さんお忙しい中ありがとうございました!