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【月刊小樽自身2022年4月号】鉄道ファンがこぞって礼賛⁉だから私は小樽で撮りたい!

2022.03.25

※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。


小樽を訪れる目的は、人それぞれ。街並みを楽しみたい方、美味しいものを食べたい方、小樽の人に会いたい!っていう方もいるでしょう。カメラ女子や“映え”という言葉も流行りましたが、写真を撮るのが好きな方も多いでしょう!

今回注目するのは、“鉄”な写真についてです。小樽の街並みにとけ込む列車の風景。その魅力と撮影にまつわるトリビア的なアレコレを、とある鉄道写真家にお伺いしました。鉄分豊富な方の生態についても、お聞きしたいと思います(笑)。

鉄道写真の界隈では(恐らく)有名人、矢野友宏さんにご協力いただきました。矢野さんのご紹介はのちほど。まずは、早速ですが、写真をご覧いただきましょう。



小樽で撮影された写真をご紹介!

小樽市花園の高架を走る臨時特急ニセコ号。毎年秋に運行していますが、2021年は5色のノースレインボーカラーで走る!ということで、鉄道ファンの間では話題になっていましたが、矢野さんもしっかりおさえていました。

(↓矢野さんのSNS投稿文/2021年)
3両編成のニセコエクスプレスよりも、5両編成のノースレインボーエクスプレスが映えそう、ということで今年最後の臨時特急ニセコの運転日、これだけを見に小樽までドライブ。ニセコエクスプレスのラストランから4年。早いもんです。



続いては2014年に撮影されたこちらの画像。南樽市場のそば、勝納川にかかる鯉のぼりの大群はそれだけで絵になるのですが、更に“赤電”も一緒に収められています。実はこの翌年に普通の電車を入れて撮られたのですが、やはり赤色の存在感にはかなわなかったようです。

この“赤電”とは、JR北海道の国鉄型車両(711系)のことで、2014年度に運行終了。多くの鉄道ファンに大人気で、惜しまれつつ引退しました。

(↓矢野さんのSNS投稿文/2014年)
小樽 南樽市場のこいのぼり。
この電車には、最後の光景になりました。



小樽市新富町と勝納町の境にある陸橋、なんと高さ制限1.7m。大人の目線に近いところを走り抜ける電車もまた迫力がありそうです。矢野さんは、橋げたの石とレンガの趣にも着目されていますね。

ちなみに、こちらの陸橋については、小樽のローカルブロガー小梅太郎さんがご紹介されていますので、ブログ記事もぜひご覧ください。

(↓矢野さんのSNS投稿文/2021年)
勝納町の制限高1.7mの鉄橋。
石積みとレンガ積みの桁下がとっても雰囲気あります。



そして忘れてはなりません。鉄道ファンにとっては聖地・小樽市総合博物館本館。この博物館の構内にある「旧手宮鉄道施設」は国指定重要文化財に指定されています。画像に登場する「アイアンホース号」は、この文化財である機関車庫・転車台を使用して運行されています。いまだ現役というのがすごいですね。

(矢野さんのSNS投稿/2020年)



さて、お話を伺った矢野さんを改めてご紹介!

実は、前段でご紹介した勝納川の鯉のぼりと“赤電”の写真ですが、小樽市総合博物館の写真展で飾られ、矢野さんはそれをきっかけに作られた写真集『北海道の赤い電車』著者のおひとりでもあります。

また、クラウドファンディングで購入した「キハ183-0番台」を安平町の道の駅「あびらD51ステーション」に保存して、鉄道資源を活用した地域内外の交流を広げる活動もされています。

右手にカメラを掲げる4銃士。
えっと、どなたが矢野さんでしょう…?
(正解は記事最後のページでご確認ください)

▼矢野友宏さんのご活動
・写真集「札沼線の記憶
・写真集「北海道の赤い電車
・おおぞら会(Facebookページ

ところで、矢野さんは「鉄道写楽家」という肩書を使われていますが、「鉄道写真家」とは違うんですか?

「“鉄道写真を楽しむ専門家”という意味で、一文字変えました。もともと生まれつき、もうひとつ摂取する栄養素が必要だったんです(笑)」

必要な栄養素である“鉄分”をこまめに摂取しているうちに、人一倍濃くなってしまったのだとか(笑)。その鉄の濃さは、こちらの事例でもよくわかります。

なんとプラレールと本物の列車を組み合わせて撮影しています。きっかけはお子様用のおもちゃだったようですが、完全に大人が本気を出してしまったようです。

続いては、小樽市民なら見覚えがある方もいるでしょう。手宮線跡地で、C62の連結車輛をレールの上に並べています。動画も見せていただいたのですが、もう、ただただ楽しそう(笑)

…というように、鉄道車両が主役な写真ばかりではなくて、鉄分が少なめな方もくすっと笑えるような写真を、ご本人が一番楽しみながら撮っています。



小樽で撮る魅力は?

そんな独特の楽しみ方をしている矢野さんから見て、小樽で写真を撮ることとは、どんな魅力があるのかをうかがいました。

うーん、生活感のある街並みと鉄道が近い感じがするところでしょうか。

とってもシンプルなお返事をいただきましたが、確かに、矢野さんが切り取る小樽の鉄道写真は、美しい絶景や神がかった奇跡的な一枚というよりも、小樽のまちの風景、人の暮らしや生活感が感じられるものが多いですね。これは小樽の魅力そのものでもあります。

(矢野さんのSNS投稿文/2014年)
小樽市花園1丁目を行くSLニセコ号です。

(矢野さんのSNS投稿文/2020年)
南小樽駅のすぐ近く、開運町踏切の風景



撮りにいくための(凡人からすると並々ならぬ)努力をこっそり教えて?

これまでご紹介した写真からも、事前の仕込みがかなり必要なのだろうと思いましたが、事前に時刻表で到着や通貨の時刻を調べ、撮影スポットを確認し、時には下見を行うということは、もちろん当たり前。以前お話を聞いた時は、太陽の差し込む方角も確認されていました。

ところで、2022年2月下旬に撮影されたこちらの写真。撮るために、長靴で旭展望台に行かれたそうなのですが…?

(矢野さんのSNS投稿文/2022年)
新しいミツウマの長靴での最初のミッションは、小樽のまちでラッセルを撮ることでした。ちょうど街のあたりに日が差してくれたのは良かったですが、やってきたのは緑のノロッコ号のラッセル。赤か黄色が良かったなぁ。ということで、次回のリベンジに期待。

投稿を読んだ鉄道ファンの方が、いつもは小樽築港駅にいるラッセル車(除雪用車両)が、小樽駅に向かって走っていることに気が付いて、コメントを入れたところ、矢野さんが「築港のラッセルは、夕方に苗穂からトコトコやってきます」と返します。これだけで終わったしまった会話に、鉄分少なめの人間は全然ついていけませんでしたので、解説していただきました。

これはまず、知り合いから、ラッセル車の情報をもらったのです。
「上り雪レ回送時間(目安)
 ナホ●●
 タル●●
 下り
 タル●●
 タコ●●」

(●●には時刻が入ります)

もう全然わかりません(汗)。この暗号みたいなのなんですか?鉄な皆さんは、これでやりとりしてるんですか?

そう、これは「電報略号」というんです。ナホは苗穂、タルは小樽、タコは小樽築港。これでやりとりしますよ。
ちなみに、苗穂駅を出たラッセル車は一度小樽駅に入ってから、小樽築港駅に向かうんです。

お仲間から情報を得た矢野さんは、このラッセル車の写真を撮るために、雪に閉ざされている旭展望台(冬は車両通行止め)に長靴で挑んだのですね。それにしても、電報略号が頭に入っているということにびっくり!



番外編:小樽じゃないけど、素敵な写真あります

「日中よりも、日の出時間とか夕暮れ時間の方がドラマチックな光景が撮れることが多いので、1日の行動時間が長くなる」とおっしゃっていましたが、本当にその通り。ご自宅での準備時間も含めると、長いながい時間をかけて撮影された渾身の一枚。小樽以外の写真ですが、ご紹介します。

(矢野さん投稿/2021年)
夕焼けがピークの時に限って、踏切は鳴らないものです。

(矢野さん投稿/2014年)
昨日のもうひとつの目的地。水を張ったばかりの田んぼと寝台特急 北斗星。夕焼けもきれいでした。



(矢野さんのSNS投稿文/2016年)
「ぼく、今日は誰と一緒に来たの?」
ちいさなちいさな駅の駅長さんは、そう言って声をかけてくれたものでした。
おかえり沼牛駅」〜大きくなったかつての子どもたちは、心の故郷の駅の記憶を求めてやってきて、かつての自分の姿を重ねていたのかもしれません。



鉄道で運ばれるものはモノであったり、人そのものであったりと様々ですが、つまり、列車が登場する場所には、必ず人がいます。鉄道写真は、実は鉄道そのものではなく、そこにある人の記憶や感情、佇まいなどが映し出されていくのが、魅力なのでしょう。

矢野さんがおっしゃったように、小樽のまちではそんなシーンを沢山切り取ることができそうです。あなただけのベストタイミングに出くわしたら、是非カメラにお収めくださいね。

矢野さんのご正体はこちら!
※ちなみに4銃士の正解は、
左から2番目だそうです。