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【小樽通2024秋号】ツウな散策―懐かしさ漂う梁川通りで篆刻体験も⁉

2024.09.25

※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。

ちょっとレトロな通り~梁川(やながわ)通り

この旗が目印 梁川商店街

「小樽通」というウェブマガジンになったからには小樽市内の通りにスポットを当てていこう、ということになり今回は梁川通りのお話です。

梁川通りの「やながわ」は、榎本武揚の号が梁川(りょうせん)と称したことから、その功績に感謝と尊敬の意も込めて訓読みした上、命名されたといわれています。 榎本武揚は未開の荒野だったこのあたり一帯を購入し土地の管理を行ったということです。榎本武揚が建立した龍宮神社も梁川通りの近くにあります。

ところで榎本武揚とは、どのような人物かご存知でしょうか。
榎本武揚は幕府軍のリーダーとして最後まで戦った武将です。にもかかわらず 明治政府は敵軍の将である榎本を大臣として登用しました。新国家には欠かせない人物となり、明治の近代化に大きな功績を残していく人物です。
詳しくは、小樽自身2023年4月号の記事をご覧ください。



梁川通の場所は小樽駅を出発し少し海側に坂を下ります。国道5号線を渡り2本目の道路を左側へ。アーケードがある都通りと道路を挟んで反対側になります。

早速、梁川通りを歩いて行きたいと思います。
中央通り(小樽駅からまっすぐ海へ続く通り)から梁川通へ入っていくと小樽の街中にありながら観光客用というよりは、市民が普段生活の中で利用しているお店が多数並んでいます。
「らーめん渡海家」「そば処 やま安」「居酒屋日本海」「Coffee Shop 美蝦」などいろいろなジャンル飲食店が揃っています。忘れてはいけないのが、 市民にも観光客にも大人気の「若鶏時代なると」「なるとがある通り」と言えばわかる方もたくさんいるのではないでしょうか?

若鶏時代なるとの手前には銭湯も

そして、夜遅くまで営業している八百屋さん「斉藤商店」。
斉藤商店さんにお話を伺ったところ、朝の9時から夜の9時まで営業しているそうです。夜に来るお客さんは外国の観光客の方が多いようで、みなさんフルーツなどを買って宿泊施設に持ち帰るそうです。早く閉まってしまうお店が多い中、夜遅くまで営業している貴重なお店となっています。

夜間営業中の 斉藤商店 

観光客に大人気の三角市場とは違い、地元の人が通う小樽中央市場もあります。梁川通を挟んで両脇にあるうす緑と白の横じまの建物が小樽中央市場です。中には30店舗近くお店があり市場定番の鮮魚店、八百屋さんやお洒落な雑貨屋さん、カフェ、バー、お蕎麦屋さんなど個性的なお店が勢ぞろいです。

小樽中央市場

もう一つ気になるのは美容室が多い事。梁川通りはオシャレな人が行く隠れスポットなのかもしれません。

梁川通りのお隣

梁川通りを抜けるとまたまた個性的なお店が続いていきます。ここで目を引いたのが、蛍光色のお花のふさふさ(しだれという名前のようです)がぶら下がっています。

昔はどこの街にもあった、ふさふさ(しだれ)

少し道を行きすぎてしまいましたが梁川通は若い方にとっては、初めてなのに懐かしい感じがする通りかと思います。あまり若くない方(?)の中には、「若い頃暮らしていた町の商店街を思いだす」という方もいらっしゃるかもしれません。このようにちょっとだけタイムスリップできる通りなのです。今回特集した梁川通りには、職人の技を体験ができるお店があるということで行ってきました。



梁川通りの老舗 松田印判店

今回、取材させていただいた松田印判店さんは、1944年創業し今年80年目という長い歴史を持つお店です。

種類やデザイン、材質、書体、などを選んでオリジナルの判を作ることができます。就職祝いなどにプレゼントされることも多いとのことです。篆書体(てんしょたい)という書体で判を作るのがオススメとのことですが、この文字は今回取材に応じていただいた松田さんが直筆で書いて下さるそうです。
印鑑だけではなく社印などオリジナルデザインの判を作っていただけますので、ぜひ松田印判店さんへお問い合わせください。

松田印判店
〒047-0032
小樽市稲穂3丁目16番16号
TEL.0134-22-8767



職人の技を残していくために

松田印判店の先代 松田和久さんと仲間の方々は、「小樽に古くから伝わる、職人技術を広く知っていただきたい」という思いで平成4年に小樽職人の会を立ち上げました。現在は職人技を体験する製作体験を開催しています。まずは現代表の松田有未さんにいろいろとお話を伺って来ました。

笑顔でお出迎えしてくれた松田さん

Q.どのくらいの方が体験に来られますか?
A.一年間に300人くらいです。職人の会全体だと6000人くらいの方が体験しています。

Q.どのような方が体験に来られますか?
A.修学旅行の学生さんがメインです。最近では旅行会社の中で職人の会の製作体験が浸透し、たくさんの学生さんに体験していただいています。今は市民のみなさんの体験が少ないのでとても残念です。これからは市内の学生さんに向けても製作体験を行っていきたいです。

Q.外国人観光客の方は体験に来られますか?どこの国の方が多いですか?
A.外国人観光客の方はそんなに多くないです。ただ留学生の方なら以前は中国やベトナムの方がいらしたことがあります。
昨日もニュージーランド、アメリカ、フランスなどの方が団体でいらっしゃいました。 外国人のお客さんにわかってもらえるように製作の手順も英訳したものがあります。また外国人のお客様には名前を漢字に変換して彫っていただきます。
例えば、Phoenix(フェニックス)さんのお名前を松田さんが漢字にすると笛仁薬(ふえにくすり)さんとなります。Phoenixさん本人に漢字の意味を 「Whistle,Medicine です」と英語で伝えます。そうすると、とっても面白がって今度はこちらの名前で呼び合ったりしていました。

英語制作手順

お話を聞く限りではとっても面白そうです。でもなんだか難しそう…。
それでは製作体験です。



職人の技を体験

実際に体験をしてみましょう!当日は持ち物不要です。
通常は5人での体験となりますが今回は特別1人で体験させていただきました。体験するのは 篆刻(てんこく)(落款製作) です。

書体は篆刻で使われる3000年ほど前の中国で作られたと言われる「篆書」で製作します。篆刻では筆で文字を書き、印材にも筆で文字を書き入れるのが一般的ですが、こちらの製作体験ではどなたでも簡単にできるようサインペンを使用し、トレーシングペーパーとカーボン紙を使って石に字を転写するようにしているとのことです。

自分の名前を彫る方が多いようです。しかし私たちは「小樽通という文字を彫りたい」と松田さんに伝えました。「樽が難しい」という忠告をいただきましたがチャレンジすることにしました。

まずは四角いマスの中に普段使っている字体で文字を書いていきます。

マスの中に楷書体で文字を書きます。

次は実際に彫る書体「篆書体」を書くため辞書で調べていきます。 字画が多い文字と少ない文字のバランスなども考えながら四角いマスに篆書体を鉛筆で書いていきます。
「樽」の文字は線がたくさんあるので「小」の文字を小さくして「樽」を縦長にしました。その後サインペンでなぞり線を太くしていきます。

四角いマスに篆書体を書き終えたら文字を反転させるためにトレーシングペーパーに写します。ここではトレーシングペーパーをしっかり押さえてなぞるのがコツです。

トレーシングペーパーに写していきます。

いよいよ石を使った作業に入っていきます。使用する石は、ろう石という柔らかい石です。まず印面を平らにしてきます。左手でサンドペーパーをおさえて右手で印鑑を持ち丸く輪を描いてこすり、平らにしていきます。
松田さんのお手本を参考にくるくるっと削っていきます。

サンドペーパーで石をけずり平らにします。

次は石に文字を書いていきます。カーボン紙の上に文字が逆字になるようにトレーシングぺーパーをのせてテープで固定します。小さい石の上に文字を書いていきますので書くのに苦労しました。また写し忘れにも注意が必要です。

文字をなぞって石に書いています。

文字を写し終わったら、いよいよ彫りです。印刀(いんとう)という道具を使用します。ペンを持つように印刀を持って尖った角で輪郭を掘り進めます。松田さんが彫っている様子を見ると難しくなさそうです。

実際に彫ってみるとそれほど力を入れなくても彫ることができます。木を彫るような感覚です。今回の文字は画数が多いため、ゆっくりと丁寧に彫っていきました。歯ブラシでくずを取り除きながら進めていきます。

1時間弱の作業で彫り終了です。集中していたので、あっという間に時間が経っていました。ここで画数が多くてうまく削れなかったところを松田さんに修正していただきました。 最後にさびを出すためハンコの角を削ります。そうすることで輪郭が丸くなり、いい味になります。

先生の彫りは、丁寧で大胆!

いよいよインクにつけて押してみます。
きちんと読めました「小樽通」完成です。

今の時代「脱ハンコ」などと言われることも多いですが、
松田印判店さんはハンコ文化を広めたいという思いで製作体験を行っています。「未来を担う生徒さんに体験してもらいたい。日本の文化として残していきたい」とお話してくださいました。

体験したい方は直接、小樽職人の会のホームページにお申込みください。
「落款彫刻」以外にも色々な製作体験があります。一つとして同じものがない「自分だけのもの」をつくってみませんか?

制作体験のお申込み
小樽職人の会
TEL:0134-33-2339
最小催行人数5名から。200名以上の場合はお問い合わせください。
制作体験費(90分)お一人様1種目につき2300円(税込)
お問い合わせ
小樽市稲穂3丁目16番16号(松田印判店内)
TEL:0134-33-2339  FAX:0134-64-1003