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【小樽通2024秋号】人との交流を大切に―小樽おもてなし認証施設が語る取り組み

2024.09.25

※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。

(取材・執筆/田口智子)

今年、全国で初めて、地域独自の「小樽おもてなし認証」制度が誕生。その栄えある第1回目の認証を受けた小樽市内の企業や団体、店舗にインタビューを行い、その業種ならでは、その店ならではの「おもてなし」について語ってもらいます。

人と人との交流が生まれる歴史的建造物へ

 「旧寿原邸」は、今回、小樽おもてなし認証を取得した施設のなかで、唯一NPO法人が運営している施設です。この建物は、1912(大正1)年、「小豆将軍」として名を馳せた雑穀商・高橋直治が創建し、その後、こちらも小樽を代表する実業家・寿原外吉の邸宅となった小樽市指定歴史的建造物。この旧寿原邸を小樽市から委託され、管理・運営している「NPO法人小樽民家再生プロジェクト」代表の石井伸和さんにお話を伺いました。

「元々、小樽の本質はアナログ性。もったいない精神で、空き家に住みたい移住者と建物を繋ぐ我々だからこそ、この寿原邸も人と人との交流が生まれる場にという理念を持って運営しています」と語る石井さん。そんななか、NPO理事の一人から「おもてなし認証制度」のことを聞き、「この制度は、自分たちの理念にも合致する。渡りに船だ!」と、すぐにエントリーを決めました。

旧寿原邸は、歴史的建造物であり文化的価値はありますが、築112年で床の一部も斜めになっているなど、老朽化が進んでいる建物と言えます。さらに、個人邸宅ゆえの狭さもあり、「おのずと同じ空間にいる「人」に興味がいく距離感」と語る石井さん。完璧じゃないからいい、中途半端な空間というのが大事で、この建物自体も人間らしいと言うのです。

 また、NPOメンバーは、年齢も仕事も皆バラバラ。しかし、皆「旧寿原邸に来て、ますます小樽を好きになってくれたら」という想いで集まっており、代表の石井さんと同じ主体性を持って、旧寿原邸の運営に当たっています。接客についての教育はゼロにも関わらず、会員それぞれの個性を活かしながら、多様な表現方法で、寿原邸を訪れる「人」と交流しているんです。

「彼女は、ムード作りが本当にうまい。気軽に声をかけて、相手も安心させるのは天賦の才能だね」と、石井さんが一目置くのは、NPOメンバーの一人である山谷智恵子さん。確かに、すぅっとお客さんに話しかけ、自然に交流している様子で、「接客しなきゃ」ではなく、ご本人が交流を楽しんでいるのが感じられます。「人間と人間の交流こそ、小樽の魅力」と考えているNPO法人 小樽民家再生プロジェクトだからこそ、接客マニュアルなんてものは必要なし。メンバーの根っことなる理念が一緒なので、枝葉はそれぞれに任せていても、自然と「小樽らしいおもてなし」ができているのがわかりました。

ノートには、寿原邸運営メンバーのあたたかいおもてなしに感動した「声」がたくさん書かれています。

外国の方にも、笑顔で話しかける山谷さん。寿原邸について、小樽についてお伝えしたい!という気持ちが伝わってきます。

ちゃんと英語の説明・紹介文も用意されています。

毎年、4月下旬から10月上旬までの土日祝日のみ一般公開しています。

観光案内もする小さな郵便局

観光客の多い堺町通りにあるため、より多様な「おもてなし力」を必要とされる「小樽堺町郵便局」。じつは歴史も長く、開局は1872(明治4)年。現在の局長・永富賢さんは、8代目として2010年に就任しました。

「小さな郵便局とはいえ、母体は大きな企業ですから、個人店のように自由にはいかない部分が多いんです」と語る永富局長。それでも、父であり、堺町郵便局の6代目局長でもあった永富 昭さんが、夏の時期、観光客に雪玉を見せて喜ばせていた姿を見て、「お父さんは、面白いことをするなぁ」と感じていたそう。きっと、そんなお父さんの背中を見ながら、堺町郵便局流の「おもてなし」を子どもの頃から学んでいたのかもしれません。

定期的に、顧客満足度(CS)を向上させるための「CSマニュアル」をチェックしているそうですが、特に指導・教育をしなくても気持ちのよい対応ができる局員さんばかりだそう。「郵便局には、お年寄りの方も多く来ますので、より丁寧でわかりやすい対応が求められます。結果的に、自然とおもてなしができているんだと思います」という永富さん。

また、「観光客の方に美味しいランチスポットを聞かれたり、買い物する場所を聞かれたりとインフォメーション的な要素もありますが、局員たちは気さくに対応しています。来局される方の8割がインバウンド。でも、スマホを使いながらうまくコミュニケーションをとっています」とのこと。さらに、観光客の方のために、ほかの郵便局より絵葉書やグッズ類の販売コーナーを広く取り、品数も多くしているのも堺町郵便局ならではです。絵葉書を自分の国の友人・家族に出す方も多く、少しでもわかりやすいように英語表記も増やしています。

「英語は得意ではないですが、外国の方が来ても難しいと感じることは少ないです。とにかく大事にしているのは“笑顔”。これは世界共通ですから」と、まさにニッコリと笑顔で教えてくれました。おもてなし認証制度を取得できたと聞き、普段の対応なのにいいのかな?と内心驚いたと言う永富局長ですが、「観光地・小樽のブランド、品質は落とせませんから」という言葉がサラリと出るあたり、ここには通常の郵便局のおもてなしを超えたおもてなしがあるのだな、と実感しました。

貯金や保険を扱う郵便局だからこその、誠実で丁寧な接客

「笑顔」を大事にしている永富局長。もちろん、自ら接客もします。

小さな郵便局にもかかわらず、グッズがたくさん!観光客の方が喜ぶ、小樽や北海道ならではのハガキも並んでいます。

インバウンドの方にも人気という「風景印」も観光の記念になります。