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※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。
今年、新日本海フェリー(1969年設立)は、新潟ー小樽航路 就航50周年を迎えました。
1974年6月7日に敦賀-新潟-小樽航路の第1船就航以降、多くの人々が海の玄関口として小樽港を利用してきました。現在は、新潟ー小樽、舞鶴ー小樽の2つの定期航路があります。
ところで、新潟と小樽をつなぐキーワードは何か、お気づきでしょうか?そう、北前船です。かつての寄港地同士、せっかく北前船の特徴である広域性を活かそうということで、モニターツアーが実施されました。航路を体感し、寄港地コンテンツを堪能するツアーの内容をご紹介しますので、フェリー船旅と小樽での北前船スポットめぐりをお楽しみください。
▷新日本海フェリー 公式サイト
今回の事業を企画したのは、高野宏康さん。北前船の船主集落として知られている石川県加賀市橋立町のご出身であり、北前船をライフワークにされています。
今回のツアーでも自らガイド役も担当し、参加者は専門家から濃厚なお話を聞くことができて大満足でした。
・国立大学法人小樽商科大学客員研究員
・北前船研究活用ネットワーク代表
・おたる案内人マイスター
ツアー行程(2泊3日)
1日目 北前航路を体感ー新日本海フェリー乗船
2日目 ①小樽グルメの朝食ーホテルソニア小樽
2日目 ②小樽港を一望する絶景スポットー小樽天狗山
2日目 ③小樽運河散策
2日目 ④小樽と北前船の歴史を学ぶー小樽市総合博物館運河館
2日目 ⑤運河を体感ー小樽運河クルーズ
2日目 ⑥北前船で小樽を伝えるショップー小樽百貨UNGA↑
2日目 ランチ
2日目 ⑦小樽の酒造りー田中酒造亀甲蔵
2日目 ⑧小樽堺町通りを散策
3日目 ⑨日和山と小樽市鰊御殿をのぞむ―祝津パノラマ展望台
3日目 ⑩鰊漁の繁栄―旧青山別邸
3日目 ⑪北前船主が奉納した船絵馬見学ー祝津恵美須神社
3日目 ⑫高島越後盆踊りを見学―茨木家中出張番屋
3日目 ⑬北前船の信仰拠点ー徳源寺龍神堂
3日目 ⑭小樽最古の船絵馬ー明治宮鹽谷神社
3日目 ランチ
3日目 情報交換会
フェリーで小樽に向かいます!
●新潟発 小樽行 タイムテーブル
12:00発 → 翌日04:30着 ※運航 火曜~日曜
新潟ー小樽航路は、「らべんだあ」または「あざれあ」のどちらかで、2017年に造船された比較的新しい船です。
フェリー旅というのは、大部屋でゴロ寝というイメージの方も多いかもしれませんが、今は個室が主流。一般的なホテルの客室やカプセルタイプを想像してもらうとよいかもしれません。今回のツアーでは、「ステートAツイン」というお部屋でしたが、海側のお部屋だったので窓から外の景色も眺めることができ、船旅気分を満喫しました。ちなみに、乗船券に印字されているQRコードが、ルームキーになるので、紛失しないように注意です。
船内ではインターネットワークはありませんが、パブリックスペースも多く、露天風呂やスポーツルームもあり、洋上でゆったりとした時間を過ごすにはとっても快適です。オフラインの時間を満喫しましょう(笑)天気が良ければ、サンセットクルージングも楽しめます。
▷船内設備の詳細はこちらから
このツアーでは、特別に北前船仕様になっていましたので、その内容もご紹介します。
まず船内には、北前船についてのパネルが展示されました。時間はたっぷりある船内ですから、パネルをじっくりと読まれる乗船客の方も多くお見かけしました。また、船内クイズラリー企画も、北前船をテーマに実施され、こちらも多くの方が参加していました。夜には、クイズラリーの答え合わせとプレゼント抽選会も行われ、盛り上がっておりましたよ。
●「ゆっくり下船」サービス
ところで、フェリーが小樽港に到着するのは、早朝の4:30!車利用の乗船客は、次々とフェリーを下船し、目的地に向かいます。でも、4:30はちょっと早いんだよなぁという方には、新潟→小樽の航路については「ゆっくり下船」サービスがあり、6:00まで船内で過ごすこともできます。
事前に申し込みが必要なので、詳しくはこちらをチェック!
フェリー下船、小樽市内をめぐります
①小樽グルメの朝食ーホテルソニア小樽
まずは朝食で、腹ごしらえ。今回おじゃましたのは、ホテルソニア小樽の朝食ブッフェです。宿泊客ではないので、事前予約はできません。直接レストランに行ってみて、お席があれば利用可能とのことで、ドキドキしながら向かいましたが、無事に朝食をいただくことができました。
※皆さんお腹いっぱいになったようで、実はお昼のお寿司が入らなかった方も多かったとか…
▷ホテルソニア小樽 レストランIL ONAI 公式サイト
②小樽港を一望する絶景スポットー小樽天狗山
続いて向かったのは、小樽天狗山。
山頂からは港や小樽のまちを俯瞰して眺めることができるので、小樽を訪れた方がまず最初に天狗山に向かうというのは、実はオススメなんですよね。特に今回はフェリー旅なので、自分たちが小樽に入ってきた軌跡も確認できるのです。フェリーが停まっているのも見えましたよ!
▷小樽天狗山ロープウエイ 公式サイト
③小樽運河散策
小樽運河中央橋付近にある「旧小樽倉庫」から出発し、北運河側の「旧大家倉庫」「旧右近倉庫」のあたりまで、北前船の構成文化財である北前船主の倉庫が残されているエリアを、高野さんのガイドで歩きます。新潟や北陸にゆかりのあるお話を説明してくれましたよ。北前船は、寄港地の倉庫と実家の両方の情報を紐解いていくと色々と発見があるそうです。
・小樽花月堂は、1851年(嘉永4年)に現在の新潟県の新発田市にて杉本花月堂として創業、3代目が明治36年に小樽へ渡り、翌年に杉本花月堂を開業したことがはじまり。また、花月堂の工場長を務めた人が独立して緑町で創業したのが松月堂。
・磯野倉庫(現:レストランISO)は、新潟県佐渡出身の商人である磯野進によって建てられ、佐渡の本店で醸造した味噌などを収納していた。小林多喜二の小説「不在地主」のモデルになった。
・福井出身の右近権左衛門は、加賀の広海家とともに、現在の損保ジャパンの元になる日本火災海上保険株式会社を作った。旧右近倉庫に掲げられている印は「一膳箸」
④小樽と北前船の歴史を学ぶー小樽市総合博物館運河館
明治26年に開業式が行われた「旧小樽倉庫」(明治23~27年)の建物を利用している博物館運河館を訪問しました。
北前船の模型や帆の実物、ニシン漁に関係する資料など、石川直章館長にご説明いただきましたが、やはり説明を聞きながら見ると理解力が変わりますよね。気づいたらツアー参加者ではない一般入館の方も、一緒にお話を聞いていたようです(笑)
▷小樽市総合博物館 運河館 公式サイト
⑤運河を体感ー小樽運河クルーズ
40分の乗船時間の中で、北運河や小樽港、歴史的建造物など、小樽の歴史について、キャプテンがガイドをしてくれるます。
海の風を感じながら、小樽のまちを眺めていると、往時の北前船の船乗りたちの気持ちを味わえる…かも⁉
▷小樽運河クルーズ 公式サイト
⑥北前船で小樽を伝えるショップー小樽百貨UNGA↑
北前船とともに歩んだ「小樽の物語」を、地域のものづくりとともに届けることをコンセプトにしているお店です。お店の方から、運営コンセプトについての説明や取り組みの内容をお話いただきました。
小樽の歴史や物語が伝わるような商品を販売していたり、他の北前船寄港地の商品も取り扱っているので、定期的に覗きにくると楽しいお店ですね!
▷小樽百貨UNGA↑ 公式サイト
⑦小樽の酒造りー田中酒造亀甲蔵
最盛期の小樽には、50以上の酒蔵があったそうですが、田中酒造は、現在小樽に唯一残る酒蔵です。明治32年創業、小樽市内で「本店」と「亀甲蔵」の2店舗を経営しています。店舗兼酒蔵として使っている建物は、佐渡から移住した岡崎家の倉庫群で、小樽市の歴史的建造物に指定されています。
北海道産米を100%使用した酒造りを一年中行っているので、いつでも酒造りを見学できるのが特徴です。高野さんのガイドで酒蔵見学を行ったあとは、試飲やお買い物を楽しまれていました。
▷田中酒造 亀甲蔵 公式サイト
⑧小樽堺町通りを散策
堺町通りの北一硝子三号館を訪れました。現在はガラス販売を行っていますが、元の木村倉庫は鰊を保管していた倉庫ということで、北前船とも縁の深い場所です。
また、現在、メルヘン交差点と呼ばれているエリアは、小樽港の歴史の中でも古い時代に船入澗があり、有幌の倉庫群と一体となった物流拠点でした。この付近に並ぶ建物は実は富山に縁のあるものが多いのです。
・現在「オルゴール堂本館」として運営されている建物は、共成㈱という北海道一の精米事業者でしたが、創業者は富山出身。北前船で富山から運ばれた米を扱っていた。
・現「銀の鐘1号館」は、富山県をルーツとする旧中越銀行小樽支店(のちの北陸銀行南小樽支店)
・現「ツルハドラッグ小樽堺町店」は富山の戸出物産小樽支店
次の日は、祝津と塩谷を訪問します
⑨日和山と小樽市鰊御殿をのぞむ―祝津パノラマ展望台
さて、日付が変わって小樽市内滞在2日目は、祝津からスタートです。パノラマ展望台の江差追分の歌碑を見ながら、その内容を高野さんに解説していただきました。
「忍路高島 およびもないが せめて歌棄磯谷まで」
積丹の神威岬は女性が通ると遭難するとされ、女人禁制だった。難所であったことと、婦女子が来ることでまちができることを警戒した松前藩が禁止したとされる。忍路高島(忍路)は鰊漁の大漁場だったが、そこまで一緒に行くことはできないので、せめて歌棄磯谷(寿都)までというラブソングであったと言われている。
一方で、西川家が忍路、高島、歌棄、磯谷と4つの場所を請け負っていたことがあることがあるので、「それには及ばないが、せめて歌棄と磯谷くらい請け負いたいものだ」という説もある。
明治16年に、日和山に近代灯台ができたが、それまでは常夜灯がランドマークだった。ちなみに、「日和山」という名称の山は全国に80カ所以上あり、新潟にもありますよ。
▷祝津パノラマ展望台
(Googleマップ)
⑩鰊漁の繁栄―旧青山別邸
ニシン大尽と呼ばれた青山家が、最盛期の大正時代に贅を尽くして建てた別荘です。三代目の政恵が、山形県酒田市の本間家に招かれたときに、その豪勢な建物に魅せられ、本間家以上のものを!と決意したとか。
祝津は、ニシン漁のリアルな実態を示すものと、贅をつくしたものと両方が残っています。小学校も明治9年に開校しており、ニシン漁で栄えた地域であることが、このような建築物でもよくわかりますね。
▷にしん御殿 小樽貴賓館 旧青山別邸 公式サイト
⑪北前船主が奉納した船絵馬見学ー恵美須神社
茨木家中出張番屋に向かって、右側の小径を登っていくとたどりつくのが恵美須神社。やや急な個所もありますが、距離は短いので、気を付けて進みます。1856年創建、社殿は1863年に建立とされています。
通常、恵美須神社の社殿の中を見ることができるのは、お正月と例大祭の時だけですが、今回はツアーの為に特別にご案内いただきました。
奉納されている船絵馬が、日本遺産の構成文化財に認定されており、おたる案内人の伊東さんが説明してくださいましたが、とっても色鮮やかで驚きます。
▷恵美須神社 小樽市ホームページ掲載
⑫高島越後盆踊りを見学―茨木家中出張番屋
さて、このあとは、今回のモニターツアーのお楽しみのひとつ、「高島越後盆踊り」を見学させていただきました!
会場となった茨木家中出張番屋は、青山家と同じくニシン漁で栄えた茨木家が、明治期に漁夫の住宅として建てたもので、祝津ニシン漁場のまちなみを形成する重要な建物のひとつとなっています。
高島越後盆踊りはおよそ150年前に新潟から小樽に伝わった盆踊りの行事で、小樽市の無形民俗文化財に指定されています。
会場には太鼓や笛の音色が響き、そろいの着物や笠を身につけ、保存会の方々が踊りを披露してくださいました。
今回のサプライズは、なんと新潟からツアーに参加された方が、お礼にと佐渡おけさを踊ってくださって、思いがけず新潟と小樽の民謡交流が実現しましたよ!
⑬北前船の信仰拠点ー徳源寺龍神堂
続いて、祝津から塩谷地域に移動し、徳源寺を訪問しました。当時忍路場所を請け負っていた西川家の支配人の尽力のもと、1862年に開創。江戸時代末期、ニシン漁とともにこの地域が発展していったことを表しています。龍神堂は、明治30年に現在の場所に本堂とともに落成しており、龍神は、漁業や海運業者たちの守護神として、日本海沿岸各地で信仰を集めていたそう。明治13年に奉納された船絵馬も奉納されているほか、北前船で運ばれてきた笏谷石(しゃくだにいし)の狛犬が設置されていることからも、北陸とのつながりを今に伝える場所なのです。
▷徳源寺 公式サイト
▷高野宏康「徳源寺龍神堂」『小樽チャンネルMagazine』
(株式会社K2、Vol.54、2020年5月号)
https://is.gd/s1255C
⑭小樽最古の船絵馬ー明治宮鹽谷神社(めいじのみやしおやじんじゃ)
最後に訪れたのは、鹽谷神社。小樽で最も船絵馬が多く奉納されている神社で、明治12年に奉納された小樽最古の船絵馬が残されており、社務所で見せていただきました。
越前産の笏谷石製の灯籠、本殿近くには出雲狛犬、本殿前には尾道の石工が作った灯籠があるなど、この神社に遺されているものからも、当時塩谷地区がニシン漁で栄え、北前船が寄港していたことが伺えます。
社殿周辺の樹木もとても雰囲気があって、推定樹林が250~300年と言われているそう。静かな社殿とともに、空に向かって高く伸びる幹や枝を眺めていると、タイムトリップをしたかのような感覚になります。
▷高野宏康「盬谷神社」『小樽チャンネルMagazine』
(株式会社K2、Vol.56、2020年7月号)
https://is.gd/UIvID7
まとめ
いかがでしたか?フェリー旅と北前船めぐりの掛け算旅行でしたが、こうやってまとめてみても、濃厚なツアーで、盛りだくさん過ぎる(!)高野さんの北前船愛が、詰め込まれたツアーでした。
この記事を参考に廻ってみようかな?という方は、興味のある場所に絞りながら、できれば何度か足を運んでみてくださいね(笑)
(筆者感想)
知識として知っていることと、実際に見たり、話を聞いたりすることで、得られるものは違うと改めて感じました。その点では、特に塩谷地区の徳源寺と鹽谷神社が、小樽の人にも比較的新しい情報かもしれませんね。
小樽通 編集部 永岡朋子
小樽運河と小樽港の間にある小さな事務所で、小樽観光を支えてくれる皆さんと日々奮闘中。Webマガジン小樽通では、記事制作も担当します。小樽の風景を撮るのが好きだったけれど、最近全く活動できていないので、なんとか活動再開したい!