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※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。
(取材・執筆 山城栄太郎)
私のような本当お酒好きはもちろんだが、たまにたしなむ程度の方でも、旅した先で「美味しいお酒」と「美味しい肴」「美味しい料理」に出逢えたなら、その喜びと感動は何倍にもなるはず。かくいう私が暮らす小樽周辺、余市、仁木、古平〜積丹半島にかけての北後志(しりべし)地域は、皆さんに飲んでいただきたい「いい酒」とそれにぴったりな「いい肴」「いい料理」の宝庫である。水がキレイで空気もおいしいからこそお酒も肴も美味い! 「マッサン」でも有名になった歴史ある余市のニッカウヰスキー はもちろん、進化をとげる余市や仁木、小樽のワイナリー、ニセコや積丹の新興クラフトジン工房も見逃せない。酒と山歩きが大好きな流浪のおじさんハイカーである私が、今日は1日がかりでこの地域の酒と食の魅力を巡ってご紹介していきます。
プロフィール/山城栄太郎
小樽市出身。小樽で子供時代をすごし、東京の大学へ進学。そのまま某大手出版社に勤め、ファッション誌の副編集長になる。家業を継ぐため帰郷し、100年続く花屋「山城屋」の4代目となる。趣味は山登りと酒と音楽。小樽観光協会発行のWebマガジン「小樽自身」(2022年~2024年)の初代編集長。
行き先はこちら!
9:10 小樽運河出発
9:30 ①小樽市/北海道ワイン「おたるワインギャラリー」
10:50 ②赤井川村/「山中牧場」ソフトクリーム
12:00 ③余市町/ワインとご当地豚肉料理の店「ワイン、ときどき豚」でランチ!
13:00 ④余市町/ニッカウヰスキー 余市蒸溜所「ニッカミュージアム」テイスティング・バー
14:00 ⑤仁木町/100年続く「フルーツ農園 階楽園」
14:30 ⑥古平町/お酒のアテを購入しましょう
15:30 ⑦積丹町/小さいけれど地域愛と個性あふれるクラフトジン工房「積丹スピリット」
17:30 ⑧小樽市/ビアパブ「小樽ビール 小樽倉庫No.1」
①北海道ワイン/おたるワインギャラリー
まずは、今後北海道新幹線の新小樽駅も出来る予定の小樽市天神町から赤井川村のキロロリゾートに抜ける毛無山の中腹にある「北海道ワイン」の醸造所であり直売所である施設「おたるワインギャラリー」に立ち寄る。晴れた時には小樽の遠景はもちろん、石狩湾の向かい側にそびえる増毛連山もくっきりと見える展望のいい場所だ。
こちらでは小樽ワインの誇る豊富なラインナップをお手軽な価格(一杯500円〜700円程度)で試飲することができる。「季節のAセット(3種)」「季節の全部セット(7種)」などのようにソムリエが予めセレクトしてくれているのが嬉しい。また醸造途中の貴重な蔵出しの「本日のベビーワイン」(まだ白濁した発酵中のフレッシュなワイン)もいただくことが出来る。
美味しいワインには美味しいあてということで、私が特に気にいったのは「おすすめおつまみプレート」、価格は500円。地元民も納得の後志(しりべし)の粋なおつまみ「いいとこ取り」なのである。余市・南保留太郎商店の燻りニシン、とんでんファームの燻製レバー、赤井川村・山中牧場の発酵バター、ナイアガラの葡萄を使った甘納豆、黒松内・トワヴェールや倉島乳業のチーズなど、、、。
セレクトの内容は日によって異なるので、価格もそれに応じて異なるそう。
これらをチビチビつまみながら、全部セットのワインの違いを堪能しつつ、遥かなる山々をぼーっと見る、、、至福!売店の一区画にある試飲コーナーとは思えないリッチな気分が味わえる「酒飲み天国」である。また、予約をすればワイナリー見学も出来るのもいいじゃないか!
対応してくれたのは須永ソムリエ。山登り好きらしい。共感!この方のセレクトなら間違いない。
おたるワインギャラリー
〒047-8677 小樽市朝里川温泉1-130(Googleマップ)
電話番号: 0134-34-2187
営業時間 9:00−17:00
無休(年末年始除く)
駐車場:有り
公式サイト
②赤井川村「山中牧場」ソフトクリーム
美味しいワインをいただいた後は、キロロリゾートを過ぎ余市方面に少し行った国道393号線沿いにある「山中牧場」でソフトクリームをいただく流れ。
根っからの辛党である私も、ここのソフトクリームが大好きだ。かつて岩内にある目国内岳(めくんないだけ)という山に登ってどっと疲れた帰り道、引き寄せられるようにここのソフトクリームをいただいた。疲れた身体の毛細血管に染み込むような美味しさで、「世界一美味しいソフトクリームだ!」と思った。
店内にはソフトクリームの他、山中牧場特製のベーコンや発酵バター、牛乳なども販売している。どれも美味そう!
株式会社山中牧場
赤井川村字落合478(Googleマップ)
電話0135-34-6711
http://yamanakabokujyou.co.jp
営業時間8:30~17:30
夏季(4月中旬~10月中旬)無休
冬季(10月中旬~4月中旬)木曜定休
③余市駅前/ワインとご当地豚肉料理の店「ワイン、ときどき豚」でランチ!
さて、本日の美味しい酒巡りの旅はまるまる1日がかり。「腹が減っては行脚はできぬ」という事で、余市の事情通の方から教えていただいた、ランチもお酒(特にワイン)も美味しい2024年6月に出来たばかりのお店がここ「ワイン、ときどき豚」。
店内に入るとカウンターには生ハムの原木がドーン!これはここ最近よく聞く余市産のブランド豚「北島豚」のワインポークを使った生ハムだそうだ。
そして店の反対側の壁面には、余市町・仁木町を中心とした個性あふれるワイナリーより、ソムリエの資格を持つ藤澤店長が厳選した美味しいワインが40mlのテイスティングサイズで飲める、専用コイン式のサーバーが置いてある。ここには常時6種類ほどが提供されていて、ボトルが空き次第、入れ替えられるので常連も飽きさせない。
さてランチである。平日限定価格で3種のメニューが提供されていて、①赤ワイン煮込みのキーマカレー(1300円) ②さっぱりレモン風味のポークジンジャー(1500円) ③北島豚ワインポークのトンカツ(1800円)※消費税込。②と③は1日限定5食。サラダ、スープ、ライス、ドリンクはビュッフェスタイルでお代わり自由となっている。
「赤ワイン煮込みのキーマカレー」はターメリックライスに個性あるスパイスの効いた粗挽きでカレー好きの私も唸る逸品。「さっぱりレモン風味のポークジンジャー」はさっぱりしたレモン風味と奥深いソースが北島豚の素材の旨さを活かした仕上がり。「北島豚ワインポークのトンカツ」は厚みとボリュームがありながら、絶妙の揚げ加減で豚の旨味を引き出しながら柔らかく仕上げられている。
カウンター越しに見るワイン以外の酒瓶も魅力的で、今度はゆっくり夜に訪れ、店長と酒話にふけながら夜のメニューもいただきたい。そんな魅力的なお店であった。また現在、「食べて、泊まれる、町なかワイナリー」を目指して、ゲストハウスやワイン醸造所の整備も進行中とのこと。その動向から目が離せない。
ワイン、ときどき豚
余市町黒川7-60-23(Googleマップ)
電話0135-25-4368
公式Instagram
ランチタイム :12:00-14:00
ワインタイム :14:00-17:00
ディナータイム:17:00-21:00(Food20:00L.O. Drink20:30L.O.)
定休日:木曜日
④ニッカウヰスキー 余市蒸溜所「ニッカミュージアム」テイスティング・バー
北海道札幌すすきの交差点といえば「ニッカの髭のおじさん」の電飾が代名詞である。昨今のジャパニーズウイスキーのブームで「余市」や「竹鶴」というブランドがアジアやヨーロッパでも大人気。長らく品切れ状態が続き、手に入っても転売ヤーによってプレミア付きのとんでもない高値になっているという。ここニッカの創業の地:余市蒸溜所を訪れると、ニッカの歴史を辿る資料が所蔵されたニッカミュージアムを巡りながら、ニッカウヰスキーのこれまでの歴史と歩み、製造工程の説明、創業者:竹鶴政孝さんとご夫人のリタさんの余市での生活にまつわる資料などを見ることができる。
※現在、余市蒸溜所では、製造エリアの自由見学は行っておらず、見学を希望する場合はガイドツアーの予約が必要。予約がなくても、ショップ・レストラン・ミュージアムの利用が可能です。(裏門からの入場となるので、お間違いなく)
また、これが最高に嬉しいのだがニッカのテイスティング・バー(有料)が併設されていて、ここでは中央の真鍮製のポットスチルを眺めながら、ここでしか飲めない余市蒸溜所限定ウィスキーなどを試飲することが出来る。訪れたこの日も世界中からのお客さんが、奥深い味わいに舌鼓を打っていた。
2023年に改装されたばかりのレストラン「RITA’s KITCHEN(リタズキッチン)」や樽出しの酒やグッズが買える売店もあって、酒巡りの楽しさを堪能しました。まさに「酒飲み天国!」。
ニッカウヰスキー余市蒸溜所
余市町黒川7-6(Googleマップ)
電話0135-23-3131(9:00-16:15)
▽入場時間
・ミュージアム (9:15-15:30)
・テイスティングバー (LO16:00)
・ディスティラリーショップ (9:15-15:30)
・レストラン (10:00-15:20)
※全施設の閉館時間は16:15です
駐車場:有り
公式サイト:https://www.nikka.com/know/yoichi/
⑤仁木町/100年続く「フルーツ農園 階楽園」
国道を余市から稲穂峠方面に走っていくと左手にピンクのド派手な建物が見えてくる。そして店頭には全身ピンクの名物お母さんがハイテンションで待っていてくれる。しかし、ここはただのフルーツ売店ではない。もう100年も続く歴史のある技術と目利きが間違いのない農園&直売所なのだ。
息子さんの大西さん自身が育てて摘んでくれたフルーツはどれも甘くて美味しい。季節によってりんご、ナシ、葡萄、自慢のさくらんぼと食べられる。ドライブ途中にふらっと寄って、甘いフルーツを頬張ってみるのもいい。
フルーツ農園 階楽園
仁木町北町13-1(Googleマップ)
電話 0135-32-2143
営業時間 7:00~17:00
駐車場 25台(無料)
⑥古平町でお酒のアテを購入しましょう
方角を変えて、今度は漁業と水産加工業が盛んなまち古平へ。主に獲れる魚種はホッケ・タコ・エビ・タラ・ウニ。水産加工業は、タラコを中心にイイものがそろっているのだ。
古平産たらこのキッシュパイ。和と洋の絶妙なコラボ。パイとたらこ?と思うが相性はとても良く、美味しい。札幌のアップルパイの名店「かぐらじゅ」とのコラボだそう。販売する丸八田中商店さんは地域に愛される味わい深いお店。この日はホッケフライ、カキフライのフライまつりをやっていた。レジには、こちらの娘さんらしい女の子が遊んでいて、素朴な光景にジワーとツボった私。
有限会社 丸ハ田中商店
古平町大字浜町74(Googleマップ)
電話 0135-42-2359
公式サイト
東しゃこたん漁協 直売所。美味しそうな酒のアテになりそうな水産加工品がいっぱい。東しゃこたん漁協協同組合生産部が作るツブ貝の塩辛「磯福」。これが酒のつまみとして最高!かつて東京に住んでいた頃、実家からクール便で送ってもらっていた。東京の酒呑にプレゼントしたら大喜びしていたものだ。
東しゃこたん漁協直売所
古平町大字港町437番地2(Googleマップ)
電話 0135-42-2518
公式サイト
それにしても、古平町の色んな味のたらこのラインナップがすごい。創業1960年「えびす印」のたらこ専門店、(株)カネト水産。工場直売やネットショップもやっている。今回手に入れた「たらこわさび漬」は、北海道産の山わさびと昆布を使い、ほどよく鼻にツンとくる、わさびの風味とまろやかでプチプチのたらこの舌触りがたまらない!
株式会社 カネト水産
古平町大字入船町63番地(Googleマップ)
電話 0135-42-2330
公式サイト
カネト水産さん近くの海岸からの景色。 こういうスコンと抜けた海岸風景が常に近くにあるのもしりべし旅の魅力。
⑦小さいけれど地域愛と個性あふれるクラフトジン工房「積丹スピリット」
今回訪れて本当に衝撃を受けたのが岬の湯しゃこたんのすぐ隣に位置するクラフトジン工房「積丹スピリット」である。
「スピリット」とは魂という意味とお酒というダブルミーニングなのだろうが、本当になるべく地元の天然の材料を使い、酒造りを通じて積丹というまちを盛り上げたいという思いが伝わって来た。
ベースとなる積丹ドライジンはEUの本格的レシピを踏襲しながら、そこに日本-北海道-後志-積丹ならではの天然ハーブから減圧蒸留したフレーバー溢れるスピリッツを調香ブレンドしながら香りを仕立てていく。
一番最初に誕生したベーシックな「KIBOU」から派生して、「KIBOU BLUE」「BOUQUET」「UMI」など現在様々な個性あるブレンデッドジンが生まれている。ハマナスやハイビスカスを浸漬した「HAMANASU 」も特に女性に飲んでいただきたい。
普段バーボンウイスキーを飲むことの多い私は正直ジンを飲む機会は少ないが、蒸留責任者である岩崎さんのジンにかける思いに打たれてメインブランド「火の帆」(HONOHO) KIBOUを購入させていただいた。アルコール45度のこの酒をロックグラスでチビチビ舐めながら、アカエゾマツの新芽やクロモジ、ラベンダーといったハーブの向こうに積丹の森や海や大地の景色を思い出しながら大事にいただこうと思った。
積丹スピリット
積丹町大字野塚町字ウエント229-1(Googleマップ)
電話0135-48-5105
公式サイト
⑧ビアパブ「小樽ビール 小樽倉庫No.1」
ここはびっくりドンキーでお馴染みの運営会社が約30年前に小樽で創業したクラフトビール「小樽ビール」の直営工場&ビアパブである。立地がすごくて、なんと観光名所:小樽運河沿いの大きな倉庫を利用しているのだ。運河沿いの窓からは運河遊覧船や散策客の姿も見える。この歴史ある石造倉庫の中には醸造用の施設や貯蔵用のタンクもあり、作業を見学しながら実際に出来たてのビールや料理を楽しむことができる。
ここのビールが凄いのは本場ドイツから一流のビール職人さんを招聘して、16世紀から続くドイツの「ビール純粋令」を守って作っているということ。つまり一切妥協せず余計な副材を使わない麦芽、ホップ、水、酵母のみ作られたピュアで本格的ドイツビールなのだ。かつて観光まちおこしを目的に林立した地ビールが廃れてゆく中、小樽ビールが生き残ったのは「本物を提供したい」という信念があったからかもしれない。
メインの銘柄は3種類一番飲みやすい「ピルスナー」、コクのある「ドンケル」、華やかでフルーティーな香りの「ヴァイス」。同じ原材料からこれだけ個性ある3種のフレーバーが生み出されることにまずは驚く。
ビールによく合うドイツ料理のメニューも充実。
かつて私の父の世代はキリン、アサヒ、サッポロといった日本ビールを愛し、地ビールブームの頃も見向きもしなかった。そして30年が経ち「小樽ビール」はクラフトマンシップ感じる「クラフトビール」として市民、観光客、そして本場ドイツからいらした方にも愛されている。地元で頑なに職人らしくビールを作り続けたら、徐々に地元民にも水が岩にゆっくり染み込むように浸透して30年という月日が経った。ますますビールの泡が美味しく感じられるいい話だとは思いませんか?
小樽倉庫No.1
小樽市港町5-4 (Googleマップ)
電話 0134-21-2323
公式サイト
営業時間:11:00〜22:00(不定休)フード・ドリンクLO 21:00
駐車場:有り
しりべしの酒の魅力を考察する。
まずうまい酒にはなくてはならない条件として、美味い水と空気という環境的要素が必要条件だ。そして米や麦、葡萄、ハーブといった原材料の質の高さだ。これは北海道の中でも羊蹄山を抱えるしりべし地方は間違いないレベルの高さを有している。そしてニッカやワイナリーに伝わる情熱あるクラフトマンシップ。いわゆる職人の技。
そして最も注目したいのは、海が多いしりべしには酒のアテになる美味しい海産物、加工品、豊かな自然に育てられた農作物の宝庫だということ。酒は酒のみでは成立しない。ニセコや赤井川の酪農によるチーズ、バター、古平や積丹、寿都、岩内のウニ、カキ、アワビや塩辛、魚卵、新鮮な魚介。小樽の寿司。余市、仁木のフルーツや豚肉や新鮮な卵。真狩や喜茂別、共和町の農作物。どれもが美味しいからよりお酒が美味しく感じるのだと思う。これからもずっと大事にしていきたい地域、しりべしなのである。
今回「しりべしの酒めぐり」をしてみて、改めてその奥深さを知らされることとなった。一回の取材だけでは時間が足りなくて、仁木や余市の個性あふれるワイナリーもニセコのクラフトジンも小樽の日本酒の酒蔵にも行けなかった。
だけどお話をお伺いできたソムリエや醸造、蒸留責任者の方々は自分のお仕事にプライドを持って、愛してやまない自らの地域の自然とその特徴を大切にしながらお店づくり、お酒づくり、製品づくりをしているのがひしひしと伝わって来た。「クラフトマンシップ」とでも言うのだろうか?
情報はお酒の味を変えるものではないけど、会話の中からその情熱や郷土愛が伝わると、旅先の酒や肴がより価値の高いものに昇華して美味しく感じてしまうのはなぜだろう? 「旅と酒」「酒をテーマに旅をする」なんてのも、何とも「粋」(いき)なんじゃないだろうか。
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