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【小樽通2024冬号】[エッセイ]北運河は哲学の道~宿のおかみは今日も行く~

2024.12.15



北運河のほとりで小さな宿「かもめや」を始めて18年になる。

 ここは、昔は大きな水産加工会社だった。小学校時代の親友の家だ。
この家の古さ、なつかしさを生かして、落ち着いた場所にしたいと思った。
レトロな家具のあるわが宿を、お客さんは「おばあちゃんの家に来たみたい」と言う。私は戦後生まれだが、明治、大正、昭和のはじめの時代にあこがれを持っている。小樽が最高に栄えた時代だ。あの頃の家。そんな宿で、忙しい現代の旅人に、我に返る時間を持ってほしいと願ってきた。

 たくさんの人がこの宿で過ごし、一夜で人生のすべてを語った人もいる。
旅のきっかけは、必ずしも楽しいことばかりではない。人生の転機に旅に出る人もいる。そんな人たちにかける言葉は、「時代についていかなくても、ゆっくりだっていいじゃない」ということである。
「今の自分でいいのだろうか?」という人には、「それでいいのよ」と言う。
そんな自分は、毎朝お客さんが寝ている時間に、犬のマルコを連れて北運河を行く。私だって「 どうすればもっといい人生が送れるの?」と来る日も来る日も
考えるのだ。

 運河べりにバラの実が色づく秋も、降り積もる雪に道がなくなる時も…。
「人はどう生きるのか」これを考えるのが哲学だろう。
そこで、この石畳の道を「哲学の道」と呼ぶことにした。

 考える旅人よ、北運河・哲学の道を歩いてごらん。石畳に答えは書いていないけど、じわ~っと生きる力がわいてくるはずだから。



こんなことを考えて歩き続けた私が、このたび本を出した。

北運河は哲学の道
宿のおかみのトコトコ歩記
(あるき)
(クナウマガジン出版)           

内容は、お客さんとのやりとりで、笑ったり、涙したり。背景には、いつもどこかに小樽の風景がある。イラストは、一緒に宿をやっている息子が描いた。こんな深刻な話が、こんなおかしい絵になるの? と母は笑いころげた。このギャップがおもしろい。

1400円で、送料は1冊210円。 
注文はかもめやへ
TEL & FAX 0134-23-4241
携帯 090-2816-2865
e-mail  kamomeya@sky.plala.or.jp



「かもめや」店主 佐藤光子
1歳から小樽育ち。東京や札幌で編集の仕事に携わり、2007年から「おたる北運河かもめや」を開業。北運河の小さな宿に集う個性豊かな旅人たちと小樽の風景をつづったエッセイ「ポーが聞こえる」を2013年に出版。小樽をこよなく愛する。



  

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