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【月刊小樽自身2023年5月号】廃自動車の窓ガラスがなんと!深川硝子工芸のヒミツ

2023.04.25

※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。


ガラスの街、小樽。
小樽には、工房から小売店まで多くのガラス屋さんがあります。
今回ご紹介するのは深川硝子工芸。
小樽市内の工場では、自社製品の「小樽切子」や、様々な食器ブランドのOEMメーカーとして日々ガラス製品を製造している硝子工房ですが、SDGsの取組も積極的に取り組んでおります。
どのような思いでSDGsに取り組んでいるのか、社長の出口さんに話を聞いてきました!



小樽再生ガラス〜深川硝子工芸のSDGsの取組〜

深川硝子工芸HPより
(写真提供:株式会社マテック)

日本では使用済み自動車が年間で約300万台破棄されていると言われていますが、その内、自動車の部品の多くは金属などの資源物としてリサイクルされており、リサイクル率は95%とも言われております。
しかし、多くの部品のうち窓ガラスに限っては、一部は断熱材としてリサイクルされている一方、ほとんどがシュレッダーダストとなり埋め立てられているのが現状です。

深川硝子工芸では、そのような役目を終えた廃自動車のガラスに新たな命を吹き込み、グラスウェアとして製品化しています。(小樽再生ガラス

小樽再生ガラス
(左からフロートグラス・フリーカップ ・カフェグラス ・サワーグラス)

【主な販売場所】
小樽百貨UNGA↑(うんがぷらす)



社長にSDGsの取組についてお話をお聞きしました!

現社長で6代目の出口健太さんにお話をお伺いしました!

--廃自動車の窓ガラスからガラス製品を作るという全国的にも珍しいこの取組はどのようにして始まったのでしょうか。

(出口さん)
北海道帯広市に本社を置くリサイクル業者の株式会社マテックさんから、廃自動車の窓ガラスが埋め立てにしかならないので、窓ガラスの使い道(アップサイクル)を探ってくれないか、一緒にトライしてくれないかとお話しがありまして、2017年からこの取組が始まりました。サンプル作りには2〜3年かかっています。

自動車の窓ガラスを持って語ってくれた出口さん

--2〜3年もかかったんですね…
--やはり窓ガラスからガラス製品を作るのは難しいのでしょうか。

(出口さん)
そうですね、色々と試行錯誤しました。一つ難しさを挙げますと、自動車の窓ガラスは、通常の素材よりも冷めるのが早いんです。
冷めるのが早いということは、その分早く成型しなければならず、技術を必要とします。スピード感が重要になりますね。

--素材が違う故の大変さがあるんですね。

(出口さん)
はい。他には、製品をどこまで完成させるのかというところですね。
通常のガラス製品は品質を均一にしなければならないため、色々と素材を投入していますが、この小樽再生ガラスはエコを目的としていますから、その工程をあえて省いています。そのため気泡も多いのが特徴で、色もひとつずつ微妙に違うんです。

色やカタチの個体差を味わいとして楽しんでいただきたいとのこと

--徹底して環境に配慮した製品作りをされているんですね。
--この取組を初めてから、どのような声を頂いていますか?

(出口さん)
テレビやニュースなどで私たちの取組が紹介された際には、「こういう取組を町工場でやっていることに感動した」という声を頂いて、実際に商品を買ってくれたお客様もいました。
また、環境に配慮したこの商品はストーリーとして提案しやすいとのことで、企業の方からも記念品として製作を依頼されたりしています。
企業名は言えないですが、ある有名な大企業からも製作依頼があったり、工房を視察させてほしいという話もあったりします。

--大企業からも…どこの会社か気になりますね!
--最近新たに取り組んでいる取組はあるのでしょうか。

(出口さん)
最近では、大学・工業試験場・株式会社マテックとの共同のもと、自動車の窓ガラスで作った場合と通常の素材で作った場合の、二酸化炭素排出量やガスの使用量を調べて、本当にエコなのはどちらなのかという研究をしております。

--そこまで調べているんですね!

(出口さん)
自動車の窓ガラスの埋め立て量が減っている一方で、二酸化炭素排出量などが増えていたら意味がありません。
環境に配慮している感で終わりたくないと考えておりまして、やるなら徹底的にやりたいですよね。

--徹底した姿勢に脱帽です。
--最後に、このSDGsの取組で、今後の展望をお聞かせください!

(出口さん)
まず、この小樽再生ガラスの取組は今後も続けていきたいと思っています。
その上で、全国的にこの取組を拡げていきたいと思っておりまして、実際に、私の知り合いの東京の硝子工場と、マテックさんの知り合いの埼玉県のリサイクル業者を引き合わせて、窓ガラスのガラス製品を製作する流れを作りました。

--小樽だけではなく、全国に拡げているんですね。

(出口さん)
その東京の硝子工場は、その取組について行政から賞をもらったようで、そのお話を聞いた時は私もとても喜びました。
将来的には、地産地消というような形で、その土地の廃自動車の窓ガラスをその土地の硝子工房で製品化する流れを全国でつくり、少しでも窓ガラスの埋め立て量削減に寄与できるよう取り組んでいきたいと考えております。
土地は有限なので、孫、ひ孫のことを考えて行動していきたいですよね。

--これからの取組に期待しております。
--お忙しい中、取材に応じていただきありがとうございました!



深川硝子工芸には、この他にも環境に配慮したシステムがあります!

深川硝子工芸は、1906年に東京都深川区(現在の江東区)にて創業し、2003年に先代である5代目社長が小樽市に工場を移転しました。
移転の際に、融雪水循環と廃熱利用のシステムを導入しています。

当時は、そこまでする必要があるのかと周りの方に言われたとのことですが、出口さん曰く、先代がこのシステムを導入してくれたおかげで今は本当に助かっているんですとお話がありました。(他の硝子工房さんと比べると、水道代が圧倒的に安いんですって!)

釜からの廃熱を給湯・暖房(ラジエーター)・ロードヒーティング・融雪に利用しています。

成形の型を冷ましている様子。
融雪水・雨水を再利用しています。

冬は、この換気口の下に雪山を置き、排熱で溶かしているとのこと。

株式会社深川硝子工芸
ホームページ / Instagram
小樽市有幌町2番3号
電話:0134-31-3002