おたる コラム

小樽の秋

三浦群来
2017年 10月 16日
三浦 群来

 山の色が毎日、変わっている。十日ほど前から所々で黄葉が始まり、少しずつ黄色の部分が広がっていた。自然は日日刻刻と変化しているのだ。
 私は毎日、地獄坂を上る。真夏には容赦なく照りつける日差しと絶え間なく吹き出る汗に閉口しながら歩いていた道のりも、今では快適に歩ける気候となった。
 カトリック小樽教会富岡聖堂を通り過ぎ、ひとつ先の信号まで行くと、天狗山の山容が目に飛び込んでくる。緑の木々の中に黄色や赤い葉が点在した自然の織り成す模様を、そのまま額縁に収めたくなった。今見ているこの景色と同じものは明日は見られないと思った私の足は、そこで止まる。秋の柔らかな光を受けた天狗山は生き生きとしていた。

 昨年、神奈川県から移住してきた私にとって、生活の拠点と自然が近接していることは、大変嬉しいことである。以前は自然を味わうために、高速道路を二時間も車で走らせなければならなかったのだ。
 小樽では高台に上ると、海も山も愛でることができる。車を20分も走らせると、海水浴場にも登山道にも行けるのだ。心豊かな暮らしができることに感謝し、幸せをかみ締めている。
 天狗山の観察と称して足を休めていた私は、再び歩き始めた。道の両側にある街路樹が色づき、歩道には赤や黄色の絨緞が敷かれている。
 北海道の街路樹には、落葉広葉樹が多く使われている。その理由は、夏には茂った葉が歩行者に日除けの役割りをし、冬に落葉すると日差しが地面まで届き、落雪や落枝の危険性が少なくなるからだということを知った。街路樹の中で紅葉する木は、ナナカマドやヤマモミジ、ハウチワカエデなどがあり、黄葉する木にはハルニレ(エルム)やイタヤカエデ、イチョウなどがある。

 街路樹を管理するためには、剪定や草刈りをはじめ、植え替えや冬囲い、また病害虫の防除といったきめ細やかな作業が必要だ。そして樹木の近くに住む人は、落葉掃きに悩まされることもあるだろう。だが、四季の彩りの変化や、樹木の種類ごとの固有の美しさが、私たちの目を楽しませ心を和ませてくれるのだ。
 雪虫が飛び始めている。冬は駆け足でやって来るのかも知れない。冬支度も少々気になるが、瞬く間に過ぎてしまう小樽の秋を心行くまで堪能することにしよう。
 息を切らせて坂を上りきった私を、見事に紅葉したエゾヤマザクラが迎えてくれた。