project
関西と北海道をダイレクトに結ぶ、新日本海フェリー。舞鶴港から小樽港まで、日本海を北上する約21時間の船旅です。
今回私が乗船したのは、2025年11月に就航したばかりの新しい船体「けやき」。“海に浮かぶホテル”とも言われている最新のフェリーで、優雅なクルージング取材……となるはずでした。(笑)
しかし、自然とは気まぐれなもの。取材当日はまさかの爆弾低気圧が直撃。正直に申し上げます。今回は揺れに揺れて、「快適な船旅」とは言えませんでした。立っているのもやっと、船内を歩くときは手すりが友達、というハードな状況。
けれど、そんな過酷な環境だったからこそ、身に染みて分かったことも。それは「けやき」の設備スペックの高さと、個室のありがたみです。
今回は、通常なら楽しめる充実の施設紹介とともに、荒天時でも安全に過ごすためのリアルな船内の様子をルポします。
荒天時は「個室」が命綱。ステートSツインのシャワーに救われた夜

フェリー旅において、最も重要なのが“客室選び”です。とくに冬の日本海は、今回のように荒れることもしばしば。そんなとき、個室のありがたさは何倍にも跳ね上がります。
今回私が宿泊したのは、個室タイプの「ステートSツイン」。入るときに感動したのが、入室がQRコードということ。

従来の鍵やカードキーではなく、e乗船券のQRコードをドアにかざすだけで「ピッ」と開錠。揺れる廊下でバッグの中から鍵を探すストレスもありませんし、船内で鍵を紛失するリスクもゼロ。非常に現代的で快適です。


そして、今回の旅で私を救ってくれたのが、客室内に完備されたシャワーブースとトイレです。
じつはこの日、大浴場は出航までの時間は利用可能だったのですが、私はギリギリまで船内全スポットの撮影や取材をしていたため、入るタイミングを逃してしまいました。そして出航後は、予報通りの荒天に。
もし部屋に水回りがなかったら……揺れる船内を手すり伝いに歩き、共用のトイレまで行かなければなりません。ですが、この部屋から一歩も出ずに、温かいシャワーで冷えた体を温め、自分専用のトイレを使える。

この「個室」という絶対安全地帯があったからこそ、この嵐を乗り切ることができました。フェリーに乗り慣れている方ではなく、初めて乗船する方や年に数回乗船するという方の中で、冬の乗船を考えている方には、強く個室をおすすめします。

また、「けやき」にはペットと一緒に泊まれる「ウィズペットルーム」も完備されています。飛行機では貨物室預けになってしまうワンちゃん・ネコちゃんも、フェリーならずっと一緒。家族全員で北海道へ移動できるのも、船旅ならではの大きな魅力です。
本来ならここを堪能したかった!大浴場・展望露天風呂・サウナがこちら

さて、ここからは本来なら楽しめるはずだった「けやき」自慢の船内施設をご紹介します。(今回は入浴できませんでしたが、取材用に特別に撮影させていただきました!)

大海原を一望できる「展望大浴場」。湯船に浸かりながら水平線を眺める……そんな、日本海の潮風を直接肌で感じられ、非日常体験ができる場所です。


さらにサウナ好きにはたまらない、窓付きの本格的なサウナ室も完備。


もちろん室内浴場もあります。


脱衣所のロッカーは100円返却式で、ドライヤーも完備。

24時間使えるシャワールームもあるので、本来なら好きなときに汗を流せる最高の環境です。穏やかな日であれば、ここは間違いなく天国…!今回は幻となってしまいましたが、次回のリベンジを心に誓いました。
船旅の楽しみは「食」にあり。オーセントホテル小樽シェフ監修の特別コースを堪能

「外は大嵐でも、船内では美食を楽しみたい!」そんな私の願いを叶えてくれたのが、今回の取材のために特別にご用意いただいた「オーセントホテル小樽」監修のスペシャルランチです。


こちらは前季節で提供していたメニューのため、現在は同じものは提供されていません。ですが、季節ごとの旬の食材を使った本格的なコース料理を楽しむことができますので、気になる人はお問い合わせをお願いします。(※要予約)

外は荒れ狂う日本海ですが、テーブルの上は優雅そのもの。小樽に着く前から、オーセントホテルのシェフの味はもちろん、北海道の旬の味覚を堪能できるなんて…!なんとも贅沢。
大きく揺れる船内で、白いテーブルクロスの上のお料理をいただく……このギャップもまた、忘れられない思い出になりました。
「けやき」船内にある施設を徹底調査!

出港前に船内探索へ行かせていただきました。「けやき」には、長時間の船旅を飽きさせないための工夫がたくさん。


乗船してまず圧倒されるのが、まるで豪華客船かのような「エントランス」。3層吹き抜けの開放感は圧巻で、ここが船の中だということを忘れてしまいそうです。


窓際にはテーブルと椅子が並ぶフリースペースがあり、本来ならここから海を眺めてコーヒータイムを楽しめる特等席になるでしょう。モダンなインテリアもあり、ただ座っているだけでもリッチな気分に浸ることができます。

船好きにはたまらない場所が、4・5階の前方にある「フォワードサロン」。 ここも2層吹き抜けになっており、進行方向の景色を大迫力で楽しめる場所です。
晴れた日の日中なら、どこまでも続く水平線を独り占めできるはず。飲食禁止の静かな空間なので、景色を眺めることに集中したい人にはうってつけです。



驚いたのが、船内に「スクリーンルーム」があること。ここでは映画上映のほか、国内フェリー初となる「プロジェクションマッピング」を使った没入型(イマーシブ)コンテンツが楽しめます。
船の上で最新の映像体験ができるなんて、進化しすぎです…!

運動不足になりがちな船旅ですが、ランニングマシンやエアロバイクを備えた「スポーツルーム」も完備。海を眺めながら汗を流せるなんて、ジムに通うより贅沢かもしれません。

船内ショップの充実ぶりも見逃せません。


お菓子や飲み物、アメニティといった日用品はもちろん、舞鶴と北海道の銘菓やオリジナルグッズ、工芸品までずらり。船内限定グッズをお土産として購入するのもおすすめです。
荒天時の過ごし方テクニック。揺れを忘れて「読書」に没頭する

「外に出られない」「大浴場も行けない」。 そんな荒天時の過ごし方として、私が提案したいのが「おこもり読書」です。海上では電波が入りにくいのですが、けやきは「Starlink」を活用した船上Wi-Fiサービスを提供しています。が、私はあえて登録をせず、船旅の醍醐味であるデジタルデトックスをして、読書タイムを楽しみました。三半規管を刺激しないよう、楽な姿勢で物語の世界に没入しました。
活字酔いする方は、オーディオブックなどもおすすめですよ!
冬のフェリー旅のリアル。遅延は覚悟の上で

最後に、冬の日本海航路を利用するなら知っておきたい「リアルな事情」をお伝えします。

冬の日本海は、天候によってスケジュールが大きく変わることがあります。

今回の取材時も、定刻23:50発の予定が深夜3:30出航に。到着も定刻20:45からずれ込み、小樽港に着いたのは深夜0:00頃でした。
しかし、これは安全運航のためには仕方のないこと。フェリー会社の方々が、気象状況を見極めて慎重に船を出してくれたおかげで、私たちは安全に北海道へ渡ることができるのです。

冬にフェリーを利用する場合は、着後の予定を詰め込まないのが鉄則。翌日の宿や交通手段には十分な余裕を持たせておけば、遅延も“長い船旅が楽しめるボーナスタイム”と捉えられる……かもしれません。
揺れても安心。頼れる「けやき」で小樽へ
日付が変わる頃、船は静かに小樽港へ接岸。外はすっかり雪の世界。
正直に言えば、今回はなかなかハードな旅路でした。船内スタッフの方にお話を伺ったところ、やはり「冬の日本海はどうしても揺れる日が多い」とのことです。
なので「冬のフェリー旅は最高です!ぜひ!」と、手放しでおすすめすることはできません。冬に乗船される際は、揺れる可能性が高いということを十分に覚悟して、酔い止めの準備を万全にしてください。
ただ、逆に言えば“それだけの悪条件でも、個室の設備があれば安全かつ快適に目的地まで船旅でたどり着ける”ということ。荒波をものともせずに進む「けやき」は、この上なく頼もしい存在だと実感しました。(とはいえ、次はぜひ穏やかな日の船旅をリベンジしたい…!笑)
関西と北海道をつなぐ新日本海フェリー。移動そのものを「旅」に変え、ゆったりとした時間を過ごせる新しい旅の選択肢としていかがでしょうか。

フリーライター タカマツ ミキ
フリーライターとして北海道小樽市で活動中。新聞記者でもある。ビールと肉と猫が好き。
