おたる コラム

小樽の優しさ

三浦群来
2018年 02月 14日
三浦 群来

 2月を迎えた。私が小樽に移住して丸2年になる。ただ好きだという気持ちだけで、親戚も知人もいない小樽の町へ、生業を畳んでやってきた。それまで旅行者として何十回も訪れていたのだが、生活してみると改めて、いいなぁと感じることがある。
 一つは小樽の人の言葉の優しさだ。耳にも心にも優しい心地よい響きに和まされる。相手の何かを尋ねるとき、語尾に「~かい?」が着けられる。
例えば、「大丈夫かい?」と言われ顔を覗き込まれると、相手の思いやりが感じられ温かい気持ちになるのだ。共通語ではこの場合、単に語尾上げの抑揚をつけ「大丈夫?」で、丁寧な表現になると「大丈夫ですか?」となる。このような表現に長年馴染んできたにもかかわらず、今となっては何とも味気なく感じられる。
 また、お礼を言うと、「なんもだよ」と返されるが、同じように共通語に置き換えると、「どういたしまして」となる。これもまたよそよそしい感じだ。「~かい?」も「なんもだよ」も親しみが感じられ、相手に親近感が湧き、お互いの距離がぐっと縮められる。
 私は小樽の優しい言い回しが好きだ。

 そして、小樽で作られる食品にも優しさを感じる。小樽は水も空気も旨いので、当然美味しいものがたくさんある。それに加え、昔ながらの製法で、原材料にこだわり、添加物を極力押え、真面目に作られているものはとても味わい深い。
 噛み締めると魚の味がする蒲鉾、朝生と呼ばれる餅、脹らし粉でごまかなさいずっしりしたパン、道内産の材料を使い1年かけて熟成させた味噌。
どれも本物の味がして、身体にも心にも優しい。
 私は小樽の優しい食べ物が好きだ。

 最後は小樽の人の優しさについてお話したい。私は移住当初から、たくさんの方々のお世話になっている。
1年目の冬は、こっちの寒さは大丈夫かい?と声を掛けられ、2年目の冬は、もう慣れたかい?と聞かれた。自宅にお茶を招いてもらい、手作りの惣菜やお菓子を御裾分けしてもらった。私を散歩に誘い出し、飲食店へも案内してくれた。小樽の人の優しさに支えられて、ここまでやってこられたことに感謝の気持ちが溢れて止まらない。人間関係も広がった。知り合いが知り合いを紹介してくれる。また友人が連れて行ってくれた先で、心揺さぶられる出会いもあった。
 私は小樽の人の優しさが大好きだ。

 小樽の町から優しさと学びを与えられた私は、これから小樽に希望の種を播き続ける。社会は少しづつ前へ進んでいく。小樽が人にも自然にも優しい、いい町になることが、私の夢である。