project
※記事の内容は、配信時の情報に基づきます。 最新情報は、各施設へお問い合わせください。
2025年、小樽はついに単独での日本遺産認定を果たしました。
かつて「北海道の心臓」とも称された小樽は、運河や石造倉庫、銀行建築といった近代の名残を色濃くとどめ、今も訪れる人々を魅了し続けています。
今回の認定をきっかけに、「まちを歩きながら歴史を感じる」新しい観光の楽しみ方が少しずつ広がり始めました。
この土地に息づく物語にふれて、あなたの旅も、その一部になってみませんか。

日本遺産に動き出す小樽|変わらない風景と新しい楽しみ
小樽が「北海道の『心臓』と呼ばれたまち~『民の力』で創られ蘇った北の商都~」として日本遺産に認定されました。
これをきっかけに、歴史と文化を楽しむ新しい観光スタイルが広がっています。
また、日本遺産認定を記念して、さまざまな商品も登場しています。
・田中酒造株式会社:認定記念デザインの日本酒「純米大吟醸 宝川」
・セブン-イレブン:コラボスイーツ(べこ餅&チョコのほうじ茶パフェ)
・新倉屋:和菓子
一部商品は販売を終了しておりますが、今後も小樽の歴史や文化を感じられる新たな商品展開が期待されています。
本記事ではまず、小樽で体験できる「歴史を感じるおすすめスポット」を3つご紹介します。
小樽の日本遺産単独認定について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
参考:小樽観光協会「祝・日本遺産単独認定!3年越しの悲願を叶えた人々の物語」
蒸気機関車「アイアンホース」で、動く歴史を体験しよう
小樽市総合博物館(手宮1)では、1909年製の蒸気機関車「PORTER 4514号(通称:アイアンホース号)」に乗ることができます。

小樽は北海道で初めて鉄道が敷かれた場所。
アイアンホース号の力強い走りは、その先駆的な歴史を今に伝えています。
音、煙、匂い、振動──五感を刺激するリアルな蒸気機関車の世界を、ぜひ体感してください。
参考:小樽市役所「蒸気機関車アイアンホース号の運行予定」
旧手宮線の線路跡は、北海道屈指のフォトスポット
小樽市総合博物館本館の近くから、中心街へ向かって続く「旧手宮線跡地」。
北海道で初めて敷かれた鉄道の一部は、今も線路や枕木が当時のまま残されており、四季折々に表情を変える美しい散策路となっています。

春は桜、秋は紅葉と、歴史ある線路と自然が織りなす景色が、多くの観光客や写真愛好家を惹きつけています。
かつて北海道の発展を支えたレールの上で、あなただけの一枚を撮影してみませんか。
参考:小樽観光協会「旧国鉄手宮線」
銀行建築で学ぶ美と歴史──日本銀行旧小樽支店金融資料館
北海道経済を支えていた小樽の中心地には、立派な銀行建築が残っています。
銀行の役割や紙幣の歴史と共に、小樽発展の歴史を学ぶことができるのが、現在は金融資料館として公開されている日本銀行旧小樽支店の建物です。

明治45年(1912年)に建築されたこの重厚な煉瓦造り建築は、全国的にも高い歴史的価値を有し、小樽がかつて北海道経済の心臓部だったことを、建物そのものが物語っています。
荘厳な外観、石材の使い方、内部の意匠──そのすべてに、近代日本の「金融の力」と「建築美」が凝縮されているように感じます。一歩足を踏み入れれば、百年前の小樽の面影が立ち上がってくるようです。
参考:小樽観光協会「日本銀行旧小樽支店金融資料館」
「日本遺産を伝える人」砂田さんに聞く|ハート・フェス誕生秘話
実際に日本遺産に関連した活動をしている人を紹介します!
インタビューを受けてくれたのは、小樽市日本遺産地域プロデューサー3期生の砂田さんです。

Q.小樽市日本遺産地域プロデューサーとは?
砂田さん)小樽市日本遺産推進協議会が実施していた人材育成プロジェクトです。
小樽の歴史や街並みを活用して、新たな事業やサービスを創造できる人を育てようというもので、私は知人の紹介でセミナーに参加し、プロデューサーとして認定されました。
Q.なぜ地域プロデューサーになろうと思ったのですか?
砂田さん)ちょうど小樽で新しいイベントを立ち上げようとしていた時期で、日本遺産のことをしっかり理解したいと思ったのがきっかけです。
砂田さん)私は小樽商科大学の出身で、学生時代はYOSAKOIソーランのサークルに所属していました。卒業後も小樽に残って社会人サークルを立ち上げ、活動を続けていた中で、「小樽こそソーラン節が似合う町じゃないか」と感じるようになったんです。
Q.企画したイベントについて教えてください。
砂田さん)「SORAN HEART FESTIVAL(通称:ハート・フェス)」というイベントです。
小樽港マリーナで、ヨットハーバーと海を背景に、YOSAKOIソーランの演舞とビアガーデンを楽しめる構成になっています。
砂田さん)名前の“ハート”は、日本遺産のテーマでもある「北海道の心臓」というキーワードを意識して付けました。
Q.イベントチラシに日本遺産のロゴを添えるだけでもよかったと思いますが、なぜそこまでこだわったのでしょう?
砂田さん)名前を借りるだけでは意味がないと思っていました。
そこで、演舞やビアガーデンだけではなく、小樽の歴史にまつわるスタンプラリーを企画して、来場者が小樽のまちを歩き、歴史にも触れられる仕掛けをつくりました。また、イベントのホームページでも日本遺産を紹介しています。
参考:小樽のストーリーが日本遺産に単独認定|歴史や文化を活用したまちづくりとは?
砂田さん)第2回には全道から約30のチームが集結し、小樽で思い出を作ってまた各地に散らばる。まさに“心臓の役割”を果たすイベントになったと思います。
Q.小樽が単独で日本遺産に認定されたとき、どんな気持ちでしたか?
砂田さん)とても嬉しかったです。
私たちのイベントがどこまで影響したかはわかりませんが、YOSAKOIソーランの仲間から「認定おめでとう」と声をかけてもらったとき、やってきたことが伝わっていたと実感できました。
砂田さん)小樽の外ではあまり注目されないニュースかもしれませんが、自分たちの活動を通じて小樽の日本遺産という取り組みを覚えてくれていたことが、素直に嬉しかったです。
Q.認定を受けて、これから期待すること
砂田さん)認定されたことがゴールではないので、これからどう盛り上がっていくか楽しみです。ゼロから何かを生み出すのは大変ですが、すでにある活動や事業と日本遺産をうまく絡めることで、認知度はもっと広がるはずです。
ハート・フェスも踊りと飲食のイベントをただ開催できればそれでよいなら、日本遺産と絡めなくても成立します。でも、ソーラン節や小樽の文化と重ねることで、まちの価値がより伝わると感じています。

第3回SORAN HEART FESTIVAL
2025年9月14日(日)11:00~
場所:小樽港マリーナ
参考:SORAN HEART FESTIVAL
まとめ:小樽の歴史にふれて、あなたの旅も物語の一部に
小樽は日本遺産の認定を受けてからまだ日が浅いものの、これから地域全体でさまざまな取り組みが展開されていくことが期待されています。
他の日本遺産認定都市では、地元の子どもたちと商品を開発したり、歴史を活かしたイベントを開催したりと、地域をあげた取り組みが注目を集めています。
小樽にも、明治・大正・昭和の建物が数多く残っており、これは全国的にも珍しい特徴です。
これまで点在していた建物たちが、日本遺産のストーリーによって「ひとつの物語」として結ばれました。
一度訪れた道、見慣れた建物であっても、背景を知ることで、感じる世界はきっと変わります。
小樽で出会う風景や人とのふれあいが、あなた自身の旅の物語になっていく──
歴史と文化が息づくまち・小樽を、どうぞご自身の足と心で感じてみてください。

ライター 盛合将矢
本業はSEOライターです。フリーではエッセイやコラムを中心に、歴史や文学をテーマに執筆しています。難しそうに見える話の敷居を下げ、誰かの知的好奇心に火を灯すような文章を目指しています。
ライターという職業の幅広さに驚きつつ、日々、勉強のやり直しです。情報に込められた温度や、その背景にある人の思いに敬意を払いながら、言葉を重ねています。AIにはまだ負けないぞ、とペンを握る日々です。