おたる コラム

小樽の芸術

小樽の芸術
2017年 11月 29日
三浦 群来

霙が雪に変わった。
冬の足音が近づいてくる。車のタイヤは冬用に換えられ、人々は厚手の防寒着を纏うようになった。

町なかの冬仕度も万全のようである。この時期に私の心をわくわくさせてくれるのは雪囲いだ。
公園の樹々や家の庭木、街路樹などが支柱で支えられ、縄で吊られ、筵を巻かれている。造園業社が作業をする場所もあれば
各々の家で思い思いの材料で工夫を凝らしている庭もある。町歩きをしていると思わず足を止めて、様々な雪囲いに見入ってしまう。

小樽は芸術の盛んな町だ。いくつもある美術館では日本や世界の芸術が堪能でき、市民の作品では絵画や写真などの展示があちこちで
催されている。また観光や産業としての芸術はガラス工芸や木工芸、陶芸などが行われている。

小樽は芸術の盛んな町だ。いくつもある美術館では日本や世界の芸術が堪能でき、市民の作品では絵画や写真などの展示があちこちで催されている。
また観光や産業としての芸術はガラス工芸や木工芸、陶芸などが行われている。
そしてもう一つ、町なかで出会う雪囲いも身近な芸術ではないかと、私は思った。
前日まで無かった雪囲いに出会うと、そこの景色はガラリと変わってしまう。筵でくるまれた木はどんな樹木だったのだろうか。
名前は?、葉の形は?、葉の色は?。毎日見ていたはずなのに、ひとつも思い出せない。

雪が降り始めると、また景色は変わって見えるのだろう。雪が降り積ると樹々の存在は忘れられてしまうのかも知れない。
私は旅に出る友を見送るように、また会うときまで元気でと、と声をかけた。

頑丈で優しい雪囲いを見つける。が細いバラの枝が支柱に縄で巻かれて括りつけられていた。そして両端にはがっちりとした
丸太が組まれ、支柱を支えている。
よく見るとバラの花は、まだ咲いていた。4本の枝を守るために丁寧な作業をした人の心遣いが感じられる。
来年この花が咲くのを楽しみに待とうと思った。